IT大手のヤフーは8日、社員の健康に配慮する「健康経営」でユニークな取り組みを始めた。社員食堂への“揚げ物税”の導入だ。社食の価格調整で健康を意識した栄養管理を社員に勧める一方、健康経営の実践と生産性向上との相関関係をデータで明らかにする狙いもある。
ヤフーは、社員食堂の揚げ物料理に“課税”する一方、「お魚還元」として、煮魚定食を値下げ。具体的にはチキン南蛮定食を100円値上げして691円に、サバのみそ煮定食を150円値下げして543円にした。脂質の多い肉料理よりも、コレステロールを減らす働きがある魚料理を勧め、社員の健康増進につなげる意図だ。
約7千人が勤務するヤフー本社の社員食堂では、昼食が毎日約3千食提供されている。食器の裏にはICチップが貼られており、食べたメニューに含まれている栄養素を記録。社員は自分の情報を確認できるほか、健康診断での保健指導などにも活用されている。
社食では揚げ物が多い肉料理が人気で、脂質の摂りすぎ傾向にあるという。ピープル・デベロップメント統括本部の沼田瑞木さんは「これまでの啓蒙活動では目立った効果がなかった」とし、「今回の取り組みで社員の健康が生産性向上につながると証明できれば」と話す。
一方、ヤフーの親会社のソフトバンクは来年10月に予定する新本社への移転を機に、業務時間内の完全禁煙に踏み切る予定だ。現在も週1日と毎月のプレミアムフライデーの月1日に完全禁煙を先行実施しているが、目立った不満は出ていないという。
こうしたIT大手の大胆な健康経営の施策は、得意とする情報ビジネスをにらんだ動きの側面もある。健康関連の個人データは医療や製薬、保険などのヘルスケア産業への活用が期待されているためで、実際にビジネスの本格化に向けた取り組みも出始めている。
NTTは1日、三菱地所やルネサンス、凸版印刷と共同で健康関連産業の振興に協力する「健康長寿産業連合会」を設立、NTTの澤田純社長が会長に就任した。26の企業と業界団体が参画しており、高齢化社会に対応した医療費削減に取り組む。
健康経営などの実績を核に町ぐるみで健康増進に取り組む「健康都市モデル」や医療データを取り扱い、個々人にあった医療のサービス向上などにつなげたい考えだ。