道標

原発誘致の鍵握る地元有力者 地域社会の論理にのまれる電力 (2/2ページ)

 前者は独占大資本で超優良企業。法律で規制され内部の物事は規則で事細かに決められ、その通りにするよう求められる。また高学歴高収入の社員が多く、エリートは常に本社の方を見ている。

 対する地域社会は、因習が色濃く残る世界だ。契約より口頭での約束が多く、力関係や個人の都合、古くからの習慣やコネで物事が決まる。

 固定した取引先や、下請け孫請けの関係が頼りの零細な企業が主流で、原発事業に参入する場合も多層構造下にある請負の末端だ。大家族で縁戚や同窓などのつながりが強い。子供の頃からの友人と一生付き合い、生まれ育った地域で暮らし続けることを願う。原発で働くにしても転勤のない子会社の方がより人気がある。

 電力会社と地域社会は接点を探り合いながら、折り合いをつけていくことになる。後者は何回も外部から介入・干渉された経験則からか、意外にしぶとい。

 原発の職場にも自分たちの都合、地元の人間関係などを持ち込む。原発でもうける企業、利権にありついた人が狭い社会でのし上がり、巨大な電力会社を揺さぶる。そうやって電力会社は地域社会によって建前を崩され、最後は地域社会の論理にのみ込まれていく。

【プロフィル】北村俊郎

 きたむら・としろう 元日本原子力発電幹部。1944年滋賀県生まれ。慶大卒業後、日本原電に入社し理事社長室長などを歴任。日本原子力産業協会参事も務めた。原発事故で避難し、福島県内の自宅は今も帰還困難区域にある。

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