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先進「MaaS」、日本上陸へ フィンランド新興、市民生活変える

 ルート選択や運賃支払いができるアプリでスムーズな外出を楽しむ。スマートフォンや自動運転技術を生かし、さまざまな交通手段の利用を可能にする「MaaS(マース、モビリティー・アズ・ア・サービス)」の先進地フィンランド。市民生活を変えた新興企業は日本への上陸を計画している。話題のアプリを現地で試してみた。

 ボタンを押すだけ

 首都ヘルシンキで利用が広がっているスマホアプリが「Whim(ウィム)」。目的地への最適なルートの選択や、鉄道やバスなど異なる種類の交通手段の代金をまとめて支払うことができる便利さが売りだ。

 このアプリを市内のホテルから観光名所のヘルシンキ大聖堂まで利用した。アプリを開いて目的地を入力すると複数のルートが示され、バスに乗車するルートを選び料金支払いボタンを押した。

 アプリ上の地図の案内に従い、ホテルから徒歩3分ほどでバス停に移動。画面に表示されるチケットを運転手に見せるだけでバスに乗車できた。大聖堂の最寄りの降車場で下車し、アプリの指示に従って10分弱歩くと到着。操作はとてもシンプルだった。

 料金は都度払いや定額制が設定できる。月499ユーロ(約5万9000円)を支払えば公共交通機関やレンタカーを無制限に使えるプランもある。ウィムを手掛ける「マース・グローバル」のヒエタネン最高経営責任者(CEO)は「ボタンを押すだけで行きたいところへ行ける」と手軽さを強調する。

 同社によると、ヘルシンキの公共交通機関の利用は一般的な市民の場合、移動手段全体の48%を占めるのに対し、ウィムの利用者では63%に上る。ウィムは既に英国やベルギーの一部地域でも利用可能だ。

 千葉県で年内試行

 日本に関し「交通機関が非常に発達している」と述べ、需要があると分析。年内に千葉県柏市で試行する。観光客や過疎地の高齢者が簡単に移動できるようにし、日本での浸透を狙う。

 次世代交通に詳しい日本総合研究所の井上岳一シニアスペシャリストは、マースが目指すのは「都市の渋滞緩和と地方の移動手段確保」と解説する。公共交通機関の利便性を高めることはマイカー利用の抑制と環境負荷の減少につながる。フィンランドでは政府が関連法整備を進め、マースの普及を後押ししている。

 自動運転技術を活用した小型バス「ガチャ」の開発を進めるフィンランドの「センシブルフォー」もマース関連の有力企業。同社が自動運転用ソフトを手掛け、「無印良品」を展開する良品計画がデザインを担当。ヘルシンキ近郊で実証実験を始めている。

 来年にも日本に参入する考えで「自動車関連企業や商社との提携を模索している」と関係者は明かした。(ヘルシンキ 共同)

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