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ANAHD アバターで世界へ瞬間移動 遠隔操作し旅行を仮想体験

 ANAホールディングス(HD)は、人間の代わりに見たり聞いたりできる機能を備えた分身ロボット(アバター)を、来年夏までに自治体や研究機関、携帯大手3社などと協力して全世界に1000体普及させる方針を明らかにした。アバターを介して、エベレストや南極、宇宙といった幅広い場所への旅行の仮想体験などを実現させる考えだ。

 「ANAHDは瞬間移動を提供する。南米アマゾン、エベレストで音を聞き、風を感じたり、月の上を歩くのは可能か。答えはイエスだ」

 15日開幕した最新家電・ITの展示会「CEATEC(シーテック)2019」に初出展し、会場で同日公演したANAHDの片野坂真哉社長はこう強調した。

 同社が提供する瞬間移動の核となるのが、アバターと呼ばれるロボットだ。シーテックで発表したアバター「newme(ニューミー=新しい私)」はタブレット端末という「目」と「耳」、移動する車輪という「足」を備える。人間が遠隔地からタブレットやスマートフォンを通じてニューミーを動かすことで、ニューミーの見たり聞いたりしたことを疑似体験できる。ニューミーのいる場所にあたかも自分が瞬間移動したような環境がつくれる仕組み。来年4月には、各地の水族館やショッピングセンターなどに配備されたアバターを遠隔地から利用することで、瞬間移動を体験できるようになる見通しだ。

 ニューミーには目と耳、足の機能しか備わっていないが、将来は触覚や嗅覚を伝えるセンサーや屋外を移動できる高性能な足も備える方針という。

 片野坂氏は、アバターの機能について「2025年までに介護士と同じ動き、30年には人間が行けない所で活躍するレスキュー隊の活動、40年には(操作は不要で)頭で考えただけでりんごなどを取ってきてくれる能力。50年には触覚だけでなく、味覚も含めて人間の感覚すべてを備えるようになる」と話す。

 傘下の全日本空輸が物理的な移動を提供しているにも関わらず、ANAHDが仮想的な移動に注力するのはなぜか。

 片野坂氏は「航空機の利用者は全世界77億人の6%しかいない」と指摘した上で、「病気などで移動が困難な人も含めてすべての人が物理的な制限を超えてつながる世界は、飛行機を飛ばすのと同じぐらい重要だ」と、狙いを明かす。

 一方、現在のアバターはあくまで仮想的な体験にとどまるため、当面はアバターによる体験を実際の移動や観光など航空機利用につなげていく思惑もありそうだ。(大坪玲央)

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