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紙原料繊維でミルクおいしく 日本製紙 多角化へ飼料活用目指す

 紙の原料となる木材チップから取れる繊維「セルロース」を処理し、乳牛に餌として与えると、生乳のコクが増したり、生産量が増えたりすることが日本製紙の研究で分かった。繁殖成績が良くなる効果もみられた。紙の国内需要が低迷し製紙会社は多角化を模索しており、日本製紙は飼料としての活用を目指している。

 研究で与えたのは新たに開発した「高消化性セルロース」。牧草とトウモロコシに加えるとコクの深さの目安となる乳脂肪分の割合が約5%向上し、生乳の生産量も約7%増えた。牧草の一部と置き換えると、生乳の増加率は約10%に伸びた。

 セルロースは牧草などにも含まれているが、乳牛の体内で消化の妨げとなる物質「リグニン」と結合しており、消化率が高くない。これに対し、日本製紙は紙をつくる工程で木材チップに熱や圧力を加えることでリグニンを除いたセルロースを取り出しており、栄養の吸収効率を高めて好結果につなげたという。

 日本製紙は農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)と協力して研究を進めている。今後は豚や鶏など他の家畜にも応用できるかどうかも調べる。担当者は「セルロースの可能性を幅広く検討していきたい」と話している。日本製紙連合会によると、年間3000万トン台で推移していた紙の国内需要は2008年のリーマン・ショックを機に減少し、19年は2571万トンと予想されている。少子高齢化や電子媒体へのシフトも響いている。

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