SBGが米ウィーカンパニーへの支援を決めたことで、ウィーは懸案だった資金枯渇を回避できる見通しとなった。だが、経営の混乱で企業価値が下がっており、株式を保有するSBGの業績への影響は必至だ。有望企業に投資して評価益で稼ぐ戦略にもきしみが生じている。
ウィーは共用のオフィススペースを提供するビジネスを展開。世界29カ国に500カ所以上のオフィスを持ち、日本でも東京や大阪など全国に20拠点を構える。一等地のオフィスや優良顧客の獲得に積極的な投資を続け急成長してきた。
だが、キャッシュフローや最終赤字が続いても事業拡大を優先してきたことがあだとなった。新規株式公開(IPO)が頓挫し、IPOと付随した銀行融資とで計90億ドルを調達する計画が白紙になると、一気に資金繰りが苦しくなった。
「長期的の成長余地を見込んだ上での支援とのことだが、引くに引けないのが本音だろう」と関係者は指摘する。SBGはウィーに累計100億ドル以上を投資。巨額を拠出するほど切り離しには痛みを伴うだけに、簡単には資金を引き揚げられないことも支援の背景にある。
米報道によると、SBGはウィーの企業価値を80億ドル前後と見積もったという。ピークとなった今年1月には470億ドルとも見込まれていたが、その2割にも満たない。SBGはウィー株で評価損失計上を余儀なくされる見通しだ。
SBGは17年に運用額10兆円規模のファンドを立ち上げて80社超に出資し、投資先の含み益がSBGの好業績の牽引(けんいん)役となってきた。だが、市場では「ウィー以外の出資先の企業価値の評価も適切なのかという厳しい見方も出ている」(アナリスト)という。
上場を目指したウィーが一転して経営難に陥ったことでSBGの投資手法への疑念の声も出ており、今後は巨額マネーで未上場の急成長企業を取り込むSBGへの逆風も生じかねない。SBGへの懸念が強まったことで、23日の同社の株価は4190円と4月の年初来高値から約3割下落している。(万福博之)