寄稿

国連気候行動サミットで感じた“温度差” (1/3ページ)

 日本政府から新たなコミットメントや政策は出ず

 WWFジャパン 自然保護室 気候変動・エネルギーグループ 非国家アクタープロジェクト担当・田中健

 5年ぶりの気候行動サミット

 米ニューヨークの国連本部で9月23日、グテレス事務総長の呼びかけで「国連気候行動サミット2019」が開催されました。パリ協定が2020年にスタートするのを前に、世界各国の政府、企業、自治体などのあらゆる主体のリーダーたちが、地球温暖化への対応でより高い目標や行動の強化を発表する場として設けられたものです。

 パリ協定は、世界全体の平均気温の上昇を産業革命前と比べて2℃未満に抑えるとともに、1.5℃を目指して努力することを掲げています。しかし、各国政府がパリ協定のもと提出している温室効果ガスの削減目標(NDC)をすべて足し合わせても、今世紀末には約3℃も上昇することが分かっています。

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が昨年10月に「1.5℃特別報告書」を発表して以降、気温上昇を1.5℃に抑える機運が急速に高まっていますが、各国政府が提出したNDCとパリ協定が目指す目標との間には依然大きなギャップがあります。

 このギャップを埋め、1.5℃を目指す機運を世界的に盛り上げるため、グテレス事務総長は各国に対し、NDCの引き上げにつながるような具体的かつ現実的な計画を持参し、気候行動サミットに参加するよう強く呼びかけていました。各国の野心の引き上げが、今回のサミットの一番の目的でした。

 事務総長が求めた4つのこと

 “1.5℃目標”を達成するには、2030年までに世界の温室効果ガス排出量を45%削減し、2050年までに実質ゼロにする必要があります。グテレス事務総長はこれを実現するため、NDCの引き上げにつながる4つの具体的な対策を各国に求めていました。

 (1)化石燃料への補助金を廃止し、再生可能エネルギーにシフトすること

 (2)炭素の排出量に応じた価格付けをする政策(カーボンプライシング)を導入すること

 (3)石炭火力発電所の閉鎖を加速させ、新規建設を取りやめること

 (4)脱炭素型の産業に向け、公正に雇用を移行していくこと

 ところが日本では、既存の石炭火力に加え、新規建設の計画も多く残されています。また、石炭火力の輸出に対する公的補助は、海外における温室効果ガス削減に貢献する主要な施策として掲げられています。さらに、カーボンプライシング導入の議論が長く続けられていますが、いまだ導入の兆しは見えてきません。

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