主張

リブラ計画の遅延 信用に足る仕組み構築を

 米フェイスブック(FB)のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が米下院の委員会で、暗号資産(仮想通貨)「リブラ」について、米国で認可を受けるまで世界のどこでも発行しない考えを示した。

 米国の認可に時間を要するのは確実で、来年前半の計画だった発行時期を事実上断念した形である。

 これに先立つ20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、不正取引などの「深刻なリスク」があるとして、当面発行を認めないことで一致した。当局の懸念を背景に、リブラ構想への参加を見送る企業も相次いでいる。

 FBの判断は、こうした動きを踏まえたものだろう。国際社会の懸念が拭えぬままでの見切り発車が許されないのは当然である。

 G20や先進7カ国(G7)は厳格な規制が必要との認識を共有している。G20は国際通貨基金(IMF)にリブラの問題点などを検討することも促した。

 規制の抜け穴を作らないよう実効性のある国際ルールを構築しなくてはならない。これは新たな技術を金融の質的向上につなげるためにも欠かせぬ作業である。

 リブラはスマートフォンで安価に送金や決済などのサービスを利用できる電子的な通貨だ。ドルや円などで価値を裏付けて価格の乱高下を防ぐ。利便性の高い仮想通貨として27億人のFB利用者に普及が進む潜在性がある。

 だが、各国の金融当局には懸念の声が多い。テロ資金やマネーロンダリング(資金洗浄)に悪用される恐れがあるほか、国家の通貨主権を揺るがし、金融システムを混乱させかねないためだ。

 ザッカーバーグ氏はこうしたリスクを認め、懸念に対する十分な対策を講じてから発行する考えを示した。不信を残さぬよう説明責任を怠ってはならない。

 同時に各国が留意すべきは、技術革新の奔流だ。中国が検討するデジタル人民元は、ドルを基軸通貨とする国際金融秩序を揺さぶる可能性をはらむ。ザッカーバーグ氏が、規制を優先するあまり米国が国際競争に乗り遅れることに警鐘を鳴らしたのはうなずける。

 リブラのような存在が際立つのは各国政府や中央銀行がデジタル化の波に乗り遅れている証左でもある。公共財としての通貨の役割を保ちつつ、いかに新技術を取り込むかが等しく問われている。

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