10月の消費税増税で、小売店などではキャッシュレス決済をしたときのポイント還元が行われている。ただ、小売店の中でも百貨店は大手のためポイント還元は導入できない。このため各社ではテコ入れのためイベントを続々展開。「特別感」で客を絶やさず歳暮商戦までつなぐ考えだ。
駆け込み需要の反動
「さっそく影響が出始めている。ここで盛り返さないと…」。岡山高島屋(岡山市北区)の広報担当者が気をもむのは、増税の影響がさっそく目に見えてきたことだ。
同店の売上高は、9月は増税前の駆け込みで前年同月比で25%増だったが、10月に入ると同10%減に。客足も2~3%落ちた。
増税に伴うキャッシュレス決済をした際の「ポイント還元制度」では、高島屋のような百貨店や大手スーパーなど、大企業の店舗では、買い物してもポイントはもらえない。消費者は税率10%、8%のいずれかのすべてを負担することになり、客足を遠ざける要因となっている。
そこで同店では、初めてとなる月2回の催事に踏み切った。9~14日に「福岡・長崎の物産展」を開くと、中1日で16~22日に全国各地の名品を集めた「味の逸品展」を開催。フロア一面を使う催事は、多数の業者が出入りすることもあり、大がかりな準備が必要で、1回でも現場には大きな負担。それでも2回行ったことに、広報担当者は「9月までは売上高は対前年度比でプラスで推移していた。増税の反動減は避けられないが、ここで勢いを止めたくない」と狙いを明かす。
また、福岡・長崎の物産展では、仏領ニューカレドニア産の甘みの強い「天使の海老」を使用した限定ちゃんぽん、全国的な知名度のあるまんじゅう「博多通りもん」など、岡山では希少度の高い“コンテンツ”で特別感も出した。8%の軽減税率が適用される食品を使った大型イベントを通じ、最上階に客を集め、降りてくる客がほかの売り場にも立ち寄る「シャワー効果」を促す考えだ。
一方、ライバル店で、東に1キロに位置する岡山天満屋(岡山市北区)は10月、包丁研ぎ教室、パン教室、マフィン作り教室を続々と開催。「ビームスデザイン」ブランドのポーチやハンカチを買った人に対してフェルト製ワッペンを圧着するサービスなども行った。
小規模なものが中心だが、今月4~14日だけでもイベント数は約40にものぼる。広報担当者は「買い物だけではない付加価値で、集客を図りたい」としている。
化粧品は急成長
こうしたイベントでの集客のほか、抜本的な売り場改革にも取り組む。各社が進めるのが、業績を底支えする化粧品の充実だ。
傘下に大丸や松坂屋を持つJ・フロントリテイリングの山本良一社長は今月8日の決算会見で、前回の増税以降伸び悩む婦人服の売り場を減らし、成長市場の化粧品を増やす改革を進める方針を示した。
岡山天満屋も8月末に6年ぶりに店舗を大幅改装し、1階の化粧品売り場を3割増床していた。「外国人観光客の関心の高さ、人々の美意識の向上で、化粧品は売上高で(前年度比で)2ケタ成長している」(同店長の難波康彦・執行役員)といい、新規に人気ブランドの「M・A・C」「ドゥ・ラ・メール」などを出店。その分婦人雑貨を減らした。4階紳士服売り場にも、男性用化粧品のコーナーを新設している。
高島屋の広報担当者は「増税による心理的な影響は避けられないが、どんどん手を打って弾みをつけていかなくては、人が来てもらえなくなる」と危機感を募らせる。当面、百貨店の活発な動きが続きそうだ。