記録的猛暑だった昨年7月、空調使用にともなう排熱が気温を上昇させる「熱汚染」により、大阪市では最大で0.27度気温が押し上げられたとみられることが、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)の高根雄也主任研究員(都市気候)らの分析で分かった。
高根さんは「温暖化が進んだ将来はさらに排熱量が増えて気温が上昇する悪循環となる恐れがある」としている。
高根さんはまず、8月の大阪市について、温暖化が進んだ将来と現在の気候をコンピューター上に再現。温暖化の強さを変えた計7パターンで、空調による人工排熱を計算に入れた場合と、そうでない場合に気温がどう上昇するかを調べた。その結果、温暖化の進行にほぼ比例して熱汚染による押し上げ効果(熱汚染量)も大きくなった。温暖化により気温が3.0度上昇した場合(2070年代に相当)は、熱汚染量は時間帯によっては最大0.6度に上った。
高根さんはこれらのデータを基に、温暖化の強さから熱汚染量を計算する式をつくった。昨年7月の大阪市の気温について、2000~10年の平均気温との差を温暖化で上昇したとみなして計算。熱汚染量は朝の時間帯に最大となり、0.27度あったと推定された。同様に猛暑だった13年8月で計算したところ、熱汚染量は最大0.16度だった。
今回の研究では夏の気温が高く、大都市である大阪市を対象とした。高根さんは「何げなく使っている空調機器も、温暖化が進むと環境へのインパクトが高まる。日本だけでなくアジアの大都市などでも同様の問題が起きる」と話した。研究成果は英科学誌電子版に掲載された。