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アジア急拡大のアフリカ豚コレラ、日本でも相次ぎ検出 高い致死率で厳戒態勢

 豚の致死率が100%に近いアフリカ豚コレラの流行がアジアに広がっている。国内で問題となっている豚コレラとは全くの別物で、ワクチンや治療薬がないため、国内に侵入した場合には大きな被害が予想される。人間には感染しないが、日本の空港では、客が持ち込んだ豚肉製品からウイルスが検出される例が相次ぎ、専門家は「いつ入っても不思議でない」と警戒を呼び掛ける。

 アフリカ豚コレラは過去に欧州や南米で発生が記録されているが、2000年初頭までに、ウイルスが常在しているアフリカ以外では、ほぼ撲滅されていた。

 ところが07年ごろにアフリカから旧ソ連のジョージア(グルジア)に持ち込まれたのをきっかけに、ロシアや欧州で被害が広がり始めた。昨年8月には、世界最大の養豚国、中国で初めて発生。わずか1年間でベトナムや韓国などアジアの11の国と地域に拡大した。

 国連食糧農業機関(FAO)によると、アジアでは今年8月までに感染や殺処分によって500万頭の豚が死んだ。中国当局の発表では、飼育豚が9月には前年同期比で41%減少。豚肉価格が高騰し、深刻な社会問題となっている。

 ウイルスは人に感染せず「万が一、病気の豚の肉を食べても問題はない」(農林水産省)。だが、環境中でしぶとく生き延びるのが特徴。国境を越えて感染が広がった事例は、ウイルスに汚染された航空機や船舶内で出た残飯を豚に与えたのが原因との報告がある。発生国の農場や山野を訪れた人の靴や衣服、器材に付着し、国内に持ち込んでしまうリスクもある。

 日本での感染例はないが、農水省動物検疫所の集計では、国内各地の空港で回収した豚肉加工品からウイルスの遺伝子が次々と検出されている。昨年10月以降に中国、ベトナム、ラオス、カンボジア、フィリピンから持ち込まれたソーセージなど77点が陽性だった。

 もし豚や野生のイノシシが食べたら、感染が広がる恐れがある。「お土産を用意する時、違法に肉の加工品を持ち込まないよう徹底してほしい」と農業・食品産業技術総合研究機構の山川睦海外病研究調整監は話している。

                  

【用語解説】アフリカ豚コレラ

 豚やイノシシに感染する伝染病。人には感染しないが、豚の致死率が非常に高く、有効なワクチンや治療法はない。発熱や食欲減退などの症状は、日本で問題となっている豚コレラと似ているが、原因ウイルスは全く異なる。アフリカのダニなどが保有していたウイルスが世界に広がったとされる。日本での発生例は確認されていない。

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