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“銭湯王国の大阪”がピンチに トップの座から陥落、被災や料金アップで苦境に (2/2ページ)

 さらに逆風となりそうなのが入浴料の値上げだ。銭湯などの公衆浴場は風呂がない世帯の衛生面を支える公益性があり、都道府県が入浴料の上限を決めているが、府公衆浴場入浴料金審議会は9月、「消費税の負担相当額を反映する改定はやむを得ない」として、大人(12歳以上)の利用料金の上限を10円引き上げて450円とする答申を府に提出した。大半の銭湯で消費税率が変更される10月から適用される見通しだ。

 山谷事務局長は「消費税アップ分の値上げなので銭湯の収入が増えるわけではない。燃料代も高騰しているし、利用者にとっても料金が上がるのは困るだろう」と影響を懸念した。

 「文化の灯消さない」

 明るい話題もある。銭湯文化を残そうと、大阪の若手の銭湯経営者らが平成28年、ユニークな集客イベントを企画するグループ「for U-湯)」を結成。現在は30~50代の20人が月1回集まり、アイデアを出し合っている。

 あるベテランの銭湯経営者は「経営者の多くは長年、銭湯をやっていて高齢化している。若手の考えや意見を聞く場がなかった」と歓迎する。

 for Uが企画したイベントは、府公衆浴場組合の了承を経て全組合員に伝えられる。イベントに使うグッズを組合が用意し、実施を希望する銭湯に提供している。

 4月には入学祝いをテーマに、湯船に大量のアヒルのおもちゃを浮かべる「あひる風呂」を実施。8月11日の山の日には同府能勢町産のヒノキの丸太の輪切りを浴槽に入れる「ひのき風呂」を行った。11月26日の「いい風呂の日」には、かんきつ類で湯船を満たす企画も温めているという。

 親子2代にわたり大阪の銭湯の栄枯盛衰を見てきた土本さんは「番台に座って『いらっしゃい』と客を迎えるだけの大名商売の時代は終わった。新しいお客さんを取り込もうと意欲のある若手もいるし、このままのペースで銭湯が減り続けるとは思っていない」と力を込めた。

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