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地方滅ぼす「顧客見ない病」 “やれるムダ行政”が苦しめる (1/3ページ)

 奈良県が45億円を投じて今年4月に新設したバスターミナルがつまずいている。利用が見込みより大幅に少ないうえ、想定外の場所に渋滞を引き起こしている。まちづくりの専門家である木下斉氏は「ダメな行政事業には『顧客を見ない』という共通点がある。奈良公園バスターミナルはその典型だ。こうしたムダが地方を苦しめている」という――。

 奈良県の誤算

 奈良県は今年4月、約45億円をかけて奈良公園バスターミナルを新設しました。開業直後の5、6月の利用見込み数を約2万台としていましたが、実利用数は7000台。なぜ予想を大きく下回ったのでしょうか。

 そもそもホールや商業施設も併設した新たなターミナルを開設したのは、奈良公園を訪れる観光バスが、公園付近の狭い県営駐車場で客を降ろして待機し、渋滞が発生していたから。しかし開業しても、バスが来ない。では来ないバスはどこにいったかといえば、近隣にある春日大社や興福寺などに併設された駐車場でした。

 バス事業者の目線から、奈良公園バスターミナルと春日大社の駐車場を開業当初の条件で比較すると、図表1のようになります。

 奈良県としては渋滞の温床であった奈良公園の乗り降りを変えて、バス事業者を新たなバスターミナルに誘導しようとしたものの、利便性の高い民間駐車場のほうに行ってしまったわけです。

 バス事業者の利用が急増した春日大社、興福寺などは大混雑となり、これらに接続する道路も渋滞が発生。渋滞緩和のためのはずが、別のところに新たに渋滞を発生させるという笑えない結果となりました。

 土日祝日のみ現金支払いが可能になるが……

 さらに春日大社や興福寺は通常の利用客に迷惑がかかってしまうということで、行楽シーズンの10、11月の土日祝日は観光バスの受け入れをやめることを決定しました。この措置に対応するかたちで奈良公園バスターミナルは10月から土日祝日のみ当日予約と当日現金支払いが可能になり、挽回が期待されています。

 しかしながら、奈良県はこれで安堵(あんど)できる状況にありません。来年には、宿泊施設不足と言われてきた奈良県の目玉事業となる「奈良県コンベンションセンター」が開業します。「JWマリオットホテル奈良」や「奈良蔦屋書店」、巨大な会議場設備が入るこの施設にも、新たなバスターミナルが併設される予定になっており、どれだけの効果が出るかはまだ読めないところです。

 地域でどんなにいい名目の事業であっても、それを利用する顧客が必ず存在します。今回であればバス事業者が顧客であり、彼らの利用ニーズに即したサービスでなければ利用されないのは当然です。

 顧客調査は具体的にしなければならず、実際に奈良に乗り入れているバス事業者の上位企業などを個別にあたる必要があります。そこでつかんだ具体的な需要にもとづいて利用料などを逆算し、金融機関とも調整した上で開発規模や利用条件をあわせていくのが、事業の正攻法のやり方です。

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