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LNG輸入開始から半世紀 次の50年の取り組みスタート

 液化天然ガス(LNG)の輸入がまもなく半世紀の節目を迎える。この間、都市ガスや火力発電の燃料として普及してきたたが、エネルギー安全保障や、世界規模で取り組みが進む低炭素化・脱炭素化でもLNGの役割は拡大している。そのため、政府も今後10年間で官民合わせて1兆円の資金支援を表明するなど、LNG事業の強化に向け、次の50年の取り組みをスタートさせた。

 年間8000万トン超

 1969年11月4日、東京ガス根岸工場(横浜市)にLNG輸送船「ポーラ・アラスカ号」が到着した。このときにLNGを送り込んだ大型タンクは、今も現役として稼働している。

 LNGの輸入は人口増加や高度経済成長に伴うエネルギー需要の急増に対応するものだった。天然ガスは原油と異なり、世界各地に豊富に埋蔵され、採鉱次第で埋蔵量の増大も期待でき、安定調達が見込めた。同時に、大気汚染が社会問題化する中、有害な硫黄分を含まない点もメリットだった。

 このため東京ガスは都市ガス向け、東京電力は火力発電用の燃料として、共同プロジェクトで米アラスカからのLNG輸入を開始した。

 その後、日本のLNG輸入先はアジア諸国、オーストラリアなどに広がり、日本独特のビジネスとして発展し定着した。消費量は年間8000万トン超と世界最大級。国内の電源構成に占めるLNG火力発電の割合は2010年度には約3割を占めるなど、基幹エネルギー源と位置付けられた。

 さらに、LNGの重要度は増した。11年の東日本大地震以降、多くの原発が稼働を停止する中、その分をLNG火力発電が補った。17年度には電源構成の4割に達した。

 第2がエネルギー安全保障の観点だ。今年6月に日本のタンカーがホルムズ海峡で攻撃を受けるなど、中東情勢が緊迫化。こうした中、エネルギーの中東依存が問題視される。原油の8~9割を中東に頼る一方、LNGは2割程度。都市ガスに至っては数%程度で、中東の有事にも強い。

 そして、地球温暖化対策の点だ。LNGは石油などに比べ、燃焼時の二酸化炭素(CO2)発生量が半分程度だ。東ガスの内田高史社長は「世界的に脱炭素の動きが加速しているが、その過程では低炭素が必要で、LNGは低炭素の担い手だ」と強調する。

 1兆円資金支援

 こうした背景から、9月に開かれたLNGの生産国と消費国が一堂に会して議論する「LNG産消会議」で、政府は官民で100億ドル(約1兆円)の資金支援を実施する方針を表明。2年前の同会議でも1兆円規模の資金支援を表明し、モザンビークのLNGプロジェクトが始動するなど成果を挙げたが、新たな資金支援でLNG拡大を加速させる狙いだ。

 今後、新たな権益の獲得と並んで重視されるのが、LNG事業の海外展開だ。東京ガスはフィリピンでLNG受け入れ基地の建設プロジェクトを進める。東京電力ホールディングスと中部電力の燃料・火力発電事業を統合したJERA(東京)は、4月からシンガポールの合弁会社で、大規模なLNG売買事業を開始した。西部ガスはロシア・ノバテクから輸入したLNGをアジア各国に販売する計画を進めるなど、多くのエネルギー企業がLNGビジネスのグローバル化に着手している。(平尾孝)

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