遊技産業の視点 Weekly View

休眠プレーヤーを呼び戻すには

 □ホールマーケティングコンサルタント、LOGOSプロジェクト上級研究員・岸本正一

 若年層の遊技参加が進まないなか、「中高年層休眠プレーヤー」という潜在的マーケットに大いに注目している。高齢化が進む現代社会において、スマホを軸とした生活様式にすっかり親しんでいる若年層をパチンコホールに来店させることは至難の業だ。それよりも、比較的時間と予算に余裕があり、人口構成比率の高い中高年層を再びパチンコホールに呼び戻すことの方が現実的だと考えるのは筆者だけではないだろう。

 遊技参加人口が約3000万人といわれた1994年頃から、現在では約1000万人までプレーヤーが減少したことを考えると、この期間中に2000万人のプレーヤーがパチンコを止めたことになる。これを年齢で考えると、1994年当時40歳だったプレーヤーは、現在65歳になっている計算だ。これらの「中高年層休眠プレーヤー」の一部が、ちょっとした気分転換や時間つぶしに再びパチンコやパチスロに興じてくれるならば、業界は今よりも随分活気付いてくるように思われる。

 しかしながら、これを実現するためには、彼らがパチンコ・パチスロを止めてから現在までの“時差”という問題をクリアする必要がある。彼らが慣れ親しんだ25年前のヒット機種は、もう市場に存在しない。当時と比較して巨大化した液晶画面や数々のギミックを搭載し、遊び方(ゲーム性)も複雑化した現在の遊技機の前では、「中高年層休眠プレーヤー」は浦島太郎だ。パチンコ・パチスロを「懐かしい」と感じる余裕もなく、ただその変化にうろたえるばかり。そんな環境では彼らの遊技参加が進むはずもない。

 「中高年層休眠プレーヤー」に再び遊技参加してもらうためには、まず彼らの経験や知識にマッチする遊技機が市場に存在する必要がある。どう考えても、そこからはじめて、最終的に最新のゲーム性を搭載した遊技機を経験するという“手順”を踏むことが求められる。その“手順”を用意することが、遊技参加人口回復への大事な“一手”ではないだろうか。

 「中高年層休眠プレーヤー」の規模を考えれば、決して無駄な挑戦だとは思えない。

                   ◇

【プロフィル】岸本正一

 きしもと・しょういち 1963年生まれ。元SEの経験を生かし、遊技場の集客メカニズムを論理的に整理・研究する傍ら、全国のパチンコホールを対象にコンサルティングを行う。雑誌への連載やテキストの出版、セミナーでの講演なども手掛ける。オベーション代表。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus