中小企業へのエール

「人と地域全体を強靭化」行動に移す時

 旭川大学客員教授・増山壽一

 災害から人命・生活を守る

 久しぶりにテレビドラマを見ていたらこんな場面があった。70代とおぼしき方がコンビニエンスストアで働き始めたようだ。最近のキャッシュレス割引などの操作で手間取ってしまい裏の店員に助けを求めた。出てきた店員は若い外国人で「何度言ったら分かるのですか。しようがない人ですね」と叱りつけたのである。これを見て現在起きつつある日本。人がどんどん弱くなっていく日本社会を見ているようで、何やらやるせない気持ちになった。

 話は変わるが、東日本広域に大被害を及ぼした台風の襲来とその後の被害状況を見るたびに、日本はどこまで国土強靱(きょうじん)化をすればいいのかと考えさせられた。1959年、5000人以上の死者・行方不明者を出した伊勢湾台風以降の政府は、治水事業に巨額の資金を投下しダムを造り貯水池を整備した。そのインフラが、最近の異常気象の規模に対応できずに、今後いくら整備しても災害のパワーは弱いところを見つけ破壊していく。

 東京は死者がゼロでも、本来下流に顕在するリスクが上流で顕在し、要するにきりがないのである。一方で人や地域は、強靭なインフラに守られているという安心感からか、逃げるという本能が弱まっている。

 このあたりで、本当に大事なことは災害をゼロに押さえ込むのでなく、“人を強くし、人を守る”を再確認して、いかに死者を出さないシステムを作るかを真剣に検討すべきではないか。

 台風の災害は少なくとも地震と異なり、ITの力を総動員し事前に避難すべき地域、タイミングを適切に予測できる。現に米国では、2年前のヒューストン大水害以降、One ConcernといったITベンチャーが、人智とAI(人工知能)を組み合わせた強力なプラットフォームを通じてきめ細かい、災害から人命と生活を守るシステムを構築している。

 ITを整備し避難所を新設整備するだけでなく、住民同士で事前に助け合いの下に情報提供し合えるような柔軟な仕組みつくりも可能となるであろう。避難勧告、避難指示命令だけでは動けない人もいる。

 一方で不幸にして災害に遭った際には、生活再建に向けて政府、自治体は迅速に最大限の支援をすることを約束する。そんな「人と地域全体を強靭化」するような仕組みつくりを考え、行動に移す時期ではないか。

                   

【プロフィル】増山壽一

 ますやま・としかず 東大法卒。1985年通産省(現・経産省)入省。産業政策、エネルギー政策、通商政策、地域政策などのポストを経て、2012年北海道経産局長。14年中小企業基盤整備機構筆頭理事。旭川大学客員教授。京都先端科学大客員教授。日本経済を強くしなやかにする会代表。前環境省特別参与。著書「AI(愛)ある自頭を持つ!」(産経新聞出版)。57歳。

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