高論卓説

世界中全ての車に自動ブレーキを 発明国・日本に必要なのは“決意”だけ

 自動ブレーキ(衝突回避支援ブレーキ)の普及が進んだ結果、国内の自動車追突事故は半減したそうだ。とはいえ今でも毎年3500人以上、つまり毎日10人が交通事故で命を落としている。新技術が追突事故を大きく減らした。自動ブレーキの効果は明らかである。結果が明確に証明された以上、公道を走る全ての車に自動ブレーキ装着を義務付けない理由はどこにもない。

 だが、メーカーや車種にもよるが、自動ブレーキはまだオプション扱いだ。

 自動ブレーキは車両停止装置ではなく、事故時の被害を軽減する装置との腰の引けた見解がメーカーにある。衝突は避けられなかったが、装置が働いたおかげで衝突時のスピードが落ちた。つまり衝撃も少なかった。結果として被害者は重傷になるところを軽傷で済んだ、ということである。大いに結構、大変な成果だ。人間が操作するブレーキとAI(人工知能)が操作する被害軽減装置の二重の備えでより高い安全性が担保できる。

 欧州では、UNECE(国連欧州経済委員会)との合意の下にEU(欧州連合)圏40カ国で来年から自動ブレーキ装着が全ての新車に義務付けられるそうだ。もう自動ブレーキのない車はEUで販売できない。日本のメーカーもこの合意に参画はしているものの、日本での制度化がまだであるがゆえに、国内で販売する車をどうするかをまだ決められずにいるらしい。現実にはもう半分近くの新車販売が自動ブレーキ付きであるにもかかわらずだ。

 国土交通省も世界標準を見てから国内の法令を整備するつもりらしいが、他国の動向など見る必要はない。自動車大国・日本が率先して世界に交通安全の見本を示すべきである。国内で義務化されないにせよ、メーカーは自社の意思で販売する新車全てに自動ブレーキを装備すべきである。

 国内市場だけではなく、アメリカ、中国などUNECEと合意していない市場にも、自動ブレーキ付きの車を輸出する。その国で自動ブレーキ装着が義務化されたか否かは関係ない。

 日本の自動車メーカーの企業理念としてもう自動ブレーキなしの車は作らない、売らない、輸出しないという決意ができないものか。

 問題は中古車や輸入車をどうするかだ。輸入車に関しては自動ブレーキ未装着車を輸入禁止にすればいい。新車販売台数は年間約500万台で、現在国内には約8000万台の車が登録されているから、新車が全て自動ブレーキ付きになっても10年で3分の2しか自動ブレーキが普及しないことになる。

 中古自動車への自動ブレーキ装着要否も国交省が新しい車検制度を導入し、自動ブレーキを装着していなければ車検を通さなくすればいいだけだ。今の技術で後付けができるのはシニアのための「踏み間違い加速抑制装置」だけで、自動ブレーキの後付けは難しいという説もあるが、「車検を通さない」という伝家の宝刀を抜けば技術的な問題など必ず克服できる。

 日本が世界に率先して、自動車史上最大の発明である「自動ブレーキ」を国内で走る全ての車に装着し交通事故を撲滅する。技術はある。必要なのは決意だけだ。

                   

【プロフィル】平松庚三

 ひらまつ・こうぞう 実業家。アメリカン大学卒。ソニーを経て、アメリカン・エキスプレス副社長、AOLジャパン社長、弥生社長、ライブドア社長などを歴任。2008年から小僧com社長。他にも各種企業の社外取締役など。北海道出身。

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