ウナギの稚魚の漁獲量が減少傾向にあり絶滅が危惧されるなか、本来なら捨てられるウナギの頭を丸ごと食べられるようにと、商品化する取り組みが進んでいる。商いの町として発展してきた大阪ではウナギの頭を「半助(はんすけ)」と呼び、食材を無駄にしない“始末の精神”の象徴とされてきた。濃厚なダシがとれるうえ、美容にいいコラーゲンもたっぷり。「ウナギが食卓から遠ざかかりつつある近年、これを見逃す手はない」と、関係者は意気込んでいる。(上岡由美)
上方落語にも登場
「資源が少ないので、ウナギを食べようとむやみに言えない。それなら食べない部分を完全に使い切ろう、と考えた」
こう話すのは、元高校校長で「うなぎミュージアム雑魚寝館」(堺市堺区)館長の亀井哲夫さん(71)。今回の商品化の立役者だ。
水産庁によると、ニホンウナギ稚魚の国内採捕量(漁期は昨年11月~5月)は3・7トンで、前年実績を約6割も下回った。昭和50年代前半に50トン前後あったことを思えば、その減少ぶりは深刻といえる。
そこで亀井さんは、かば焼きにする際に本来は捨てられてしまうウナギの頭に着目。ヒントになったのは、豆腐とともに煮込んだ大阪の郷土料理で、上方落語「遊山船(ゆさんぶね)」にも登場する「半助豆腐」だった。
ウナギの頭が半助と呼ばれる由来は諸説ある。その昔、1円を「円助」と呼び、ウナギの頭ひと山の売値がその半分の50銭だったためという説。ほかにも、半助という名前の男が売っていたとか、半人前のことを半助と呼んでいたことから名付けられた-などがある。
関東では食べる習慣はなく、その理由はかば焼きにするときの焼き方の違いのようだ。関東では焼く前に頭を落としてから蒸すが、関西は丸ごと火にかけ、焼き上がってから頭を落とす。このため頭にはタレが染み込み、安くても売り物になったという。
硬さを克服、旨味たっぷり
今では家庭で使われる機会が減っている半助だが、ビタミン類やタンパク質、カルシウムなど栄養は豊富。おいしく味わってもらえないかと、亀井さんは平成26年に「うなぎ百珍」という会社を立ち上げ、商品開発に乗り出した。
ただし、この半助には一つネックがあった。頭の骨がおそろしく硬いのだ。
和食の料理人に協力を求め、箸でほろっと崩れるほど軟らかくするまでに2年かかった。「どうせウナギ屋さんには勝てないのだから、ほかのお店がやらないような商品にしよう」と、半助のすき焼きや半助のチャーハンなど試行錯誤を重ねた結果、しょうゆをベースに砂糖などと甘辛く煮る佃煮(つくだに)にすることに決めた。