リーダーの素顔

都市型コンパクトタウン開発に注力 野村不動産社長・宮嶋誠一さん

 都市型コンパクトタウン開発に注力

 野村不動産は、2020年3月期から新たな中長期経営計画をスタートした。利便性、快適性などに優れた多機能な街づくり、地球環境・地域社会の未来を見据えた街づくりとコミュニティーの形成といった価値創造に取り組む。その旗艦物件が、住宅を核とした多機能・複合開発「プラウドシティ日吉」(横浜市港北区)であり、都市再生のウオーターフロント開発「芝浦一丁目地区」(東京都港区)だ。宮嶋誠一社長は「都市型コンパクトタウンの開発に注力するとともに、地方創生の流れにも乗る」と明日を見つめる。

 芝浦を最先端地区に

 --価値創造のテーマとして多機能な街づくりを挙げている

 「18年10月にハードとソフトの融合による長く愛される街づくりを目指す『BE UNITED構想』を発表。そのために必要な活動を『ACTO(アクト)』と名付けた。誰にでも扉が開かれた場所『開くとびら』であり、さまざまな活動のきっかけ『アクション』となるという思いを込めた。マンション開発はセキュリティーを考えて『閉じる』ものだが、グループ社員をエリアデザイナーとして配置し、内と外のコミュニティーづくりをサポートする」

 --同構想に基づく開発は

 「第1弾がプラウドシティ日吉(総計画戸数1320)で、敷地内に複合商業施設や地域貢献施設、健康支援施設、サービス付き高齢者向け住宅をそろえる。またCSRやESG(環境・社会・企業統治)の観点から地域が求める開発にも取り組み、その一環として小学校を誘致し、世代や地域の垣根を越えたオープンコミュニティーを育む地域共生型の街づくりを目指す。街開き前から開放して祭りやマルシェ、スポーツイベントなどを開催する。ACTOは東京・亀戸や池袋でも展開する」

 --芝浦一丁目地区は

 「最大規模の再開発プロジェクトで、最先端の複合的な街づくりを進める。新しい交通インフラとして舟運を活用して、国際的な観光・ビジネス拠点を整備する。われわれもその一役を担うため、キラーコンテンツを考える。新しいものが詰まった街に様変わりさせて人を呼び込む」

 --CSR・ESGについて

 「企業が持続的に成長していくには社会の一員としての貢献が欠かせない。そこで環境、安心・安全、コミュニティー、健康・快適という4つの重点テーマと2つの推進基盤(人材、マネジメント体制)を策定し、事業活動を通じて社会・環境価値の創出に取り組む。芝浦もCSR・ESGの観点から、環境に配慮しサステナブルな街を創り上げる」

 地域活性化にも貢献

 --事業環境は

 「国内人口の減少や、少子高齢化といったパイの縮小はどの業界にも脅威だが、単身・共働き・シニア世帯の増加、東京の都市力・国際競争力の向上などはチャンスだ。不動産ストックの増加で、『建てて壊す』からリフォーム、リノベーションのニーズは拡大し、首都圏では中古の成約が新築を上回っている。加えて地方創生の流れもあり、地方中核都市の再開発・コンパクトシティー化もチャンス。新しい目の付けどころとして攻める」

 --新たな市場開拓は

 「訪日外国人の増加が顕著で20年の東京五輪・パラリンピック後も続くためホテル事業に力を入れる。直営の『ノーガホテル』は18年11月に東京・上野に1号店を開業、同・秋葉原と京都にも進出する。宿泊に特化したビジネスホテルとは違い、高いサービスを提供する。地域性も重視しており、地元経済の活性化に貢献したい。『庭のホテル 東京』を買収したのもコンセプトが似ているからで相乗効果を狙える。和のテイスト、おもてなしに対する外国人の評価は高い」

 --住宅ブランド「プラウド」のCMを変えた理由は

 「02年のブランド導入以来、世界の絶景地を撮影して上品・高級を訴求、評判もよかった。ただライフ・ワークスタイルが変化しており、商品も変えていく必要がある。そこで女性がランニングする姿から、上質・高級を残しながら挑戦や躍動感、自分らしさを加えたCMに切り替えた。キャッチコピーは『この家と、先に行く』で、商品・サービスをどのように変えるかを楽しみに待っていてほしい」

【プロフィル】宮嶋誠一

 みやじま・せいいち 早稲田大理工学部卒。1981年野村不動産入社。2004年取締役、14年副社長、15年から現職。61歳。東京都出身。

 ≪DATA≫

 【趣味】ゴルフは20代から楽しむ。写真は中学時代から。趣味が高じてゴルフクラブ、カメラのコレクションを始めた。このほか焼き物の収集にも乗り出した。旅行の際に記念に杯を買って帰る。「九谷焼(石川県)は色鮮やかで繊細。壺屋焼(沖縄県)は素朴で味わいがある。杯は小さいが、職人の技能が凝縮されている。ストックにも困らない」と語る。

 【広島支店】1992~95年に広島アジア競技大会(94年開催)の選手村建設に携わる。2020年東京五輪・パラリンピック選手村と同様に、選手村として利用した後、改修して新築マンションとして分譲した。「建築家、デザイナーらとともに、山の造成から取り掛かり1000戸のマンションを建設した4年の経験が、現在のまちづくり・ものづくりの原点」と振り返る。昨年、広島を再訪し巨石のモニュメント横で撮った写真を社長室に飾る。

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