みずほ総合研究所の劉家敏アジア調査部中国室研究員によると、中国工業情報化部、国家ラジオテレビ総局、中央ラジオテレビ(中央広播電視総台)は今年3月、共同で「超高精細映像産業発展行動計画(19~22年)」を発表。超高精細映像産業の発展加速の推進を指導思想とした上で、20年までに(1)4Kテレビの販売台数が全体の4割超(2)4K放送の視聴者数が1億世帯、22年までに(1)4Kテレビが全面普及(2)8Kテレビの販売台数が全体の5%超(3)4K・8K放送の視聴者数が2億世帯(4)超高精細映像産業の規模が4兆元(約60兆円)規模-といった野心的な目標を掲げた。
具体的には、▽革新的な重要部品の開発▽超高画質番組の供給拡大▽産業の革新力強化と資金投入メカニズムの整備▽国内外技術・人材・資金の活用-などの文言が並ぶ。劉氏は「中国政府は新たな成長分野として超高精細映像産業を育てようとしており、ハイエンドの消費需要の喚起に力を入れている」と指摘。さらに「22年には北京冬季五輪が予定されており、国際社会へ高い技術力を大々的にアピールする狙いがある」とも解説する。
官民挙げた対応必要
中国の“8K覇権”狙いの動きに日本メーカーも目を輝かす。キヤノンイメージソリューション事業本部主席の鹿倉明祐氏は「日本は『技術は素晴らしいが価格が高い』と導入に尻込みする放送局が多いが、中国は『いくらでもカネはある』と非常に積極的だ」と明かす。各社とも、中国国営中央テレビ(CCTV)など中国の放送局からの引き合いは少なくないという。
現時点では日本がリードする8K技術だが、圧倒的なヒト・モノ・カネを投入してくる中国に数年後にはのみ込まれる可能性もある。日本メーカーが中国に席巻された家電などの二の舞いとならないよう、官民挙げて戦略的な対応が必要となりそうだ。(桑原雄尚)