米中貿易摩擦に伴う中国経済の減速により、電子部品各社の業績が低迷している。令和元年9月中間連結決算ではTDKを除く7社が最終減益に陥った。自動車や産業機械向けの部品の販売が振るわず、通期の業績予想の下方修正も相次いだ。ただ、電気自動車(EV)や次世代通信規格「5G」関連は需要が大きく伸展。積極的な設備投資を打ち出すケースもあり、各社の製品構成で業績の明暗が分かれつつある。
「リーマンより厄介」
「当初の計画でも(事業環境を)厳しく見たつもりだったが、一段と落ちてしまった。今後も厳しいだろうし、米中の摩擦は延々と続くんじゃないですか」。ロームの藤原忠信社長は10月31日、決算発表の席でこう嘆いた。
令和元年4~9月期の営業利益は前年同期に比べて50%減、最終利益も56%減だった。令和2年3月期の業績予想も52%減の220億円とし、当初の310億円(32%減)から大幅に引き下げた。
中国で自動車の販売台数が伸び悩み、カーナビやカーオーディオ向けの部品の販売が振るわなかったことが原因だ。藤原社長は「自動車と産業機械は必ず成長する。米中の問題とは関係なく、マーケットのあるところに新商品を出すことが大事になる」と巻き返しを誓った。
一方、オムロンは10月29日、日本電産への車載事業売却に伴う譲渡益などを見込んで最終利益予想を上方修正したものの、営業利益予想は従来予想から125億円引き下げた。オムロンの日戸(にっと)興史(こうじ)CFO(最高財務責任者)は、同社を取り巻く事業環境について「底割れはせず、じわじわと悪くなっている印象。業績が一気に落ち込みながら回復も早かったリーマン・ショックの時よりも厄介だ」と述べ、先行きに懸念を示した。
強気、日本電産
中国経済の減速で自動車や産業機械向けの需要が落ち込み、電子部品各社の業績は低迷している。大手8社のうち、4~9月期に最終増益を確保できたのはTDKだけだった。
ローム以外にも、アルプスアルパインと日本電産、日東電工が通期の最終利益予想を下方修正した。アルプスアルパインは主力の自動車向けの部品の販売不振が響き、日東電工は為替の前提を円高方向に見直した影響が出た。
一方、日本電産は永守重信会長が投資家向けの説明会に出席。下方修正の原因は単なる業績不振でなく、EVに使われる駆動用モーターの開発や増産に向けた先行投資が原因だと繰り返した。