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女川原発2号機「合格」 沸騰水型軽水炉で再稼働1例目の公算も

 東北電力女川原発2号機(宮城県)の新規制基準適用審査の事実上合格を、電力業界は歓迎している。東日本大震災以降、再稼働したのは加圧水型軽水炉(PWR)の9基のみで、事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)は再稼働に至っておらず、女川2号はBWRの再稼働1例目になる可能性が高いとされるからだ。他のBWRでも再稼働に向けた動きがみられており、今回の合格が全体に弾みをつけそうだ。

 「BWRの再稼働なくして政府の電源構成目標は実現できない。女川2号の合格は、BWR再稼働の大きな一歩だ」と、電力大手の幹部は、評価した。

 政府は昨年7月に閣議決定した「第5次エネルギー基本計画」で、令和12(2030)年度の電源構成に占める原発の比率を20~22%にする目標を盛り込み、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけた。

 目標達成には30基の原発稼働が必要とされるが、新規制基準の下で再稼働できたのはPWRの9基だけ。BWRの再稼働が進まなければ、電源構成目標は「絵に描いた餅」だ。

 すでにBWRでは東電柏崎刈羽原発(新潟県)6、7号機、日本原子力発電の東海第2原発(茨城県)が審査合格している。だが、柏崎刈羽は新潟県が、原発事故に関する3つの検証の結果が示されない限り、再稼働の議論を始めることはできないとし、3年はかかるとされる。東海第2は、人口の多い水戸市などの避難計画立案が厳しく、再稼働のめどはたっていない。

 それに対し、女川2号では、再稼働の地元同意は比較的取り付けやすいとされ、令和2(2020)年度中の安全対策工事完了後、早ければ3年度中の再稼働も見込まれている。

 大手電力の首脳は「原発の信頼回復には、安全に、安定的に稼働することが一番。PWRに加え、BWRの信頼回復で全体の再稼働が加速する」と話す。

 同時に柏崎刈羽原発では、1基以上の廃炉が前提だが、柏崎市の桜井雅浩市長が「6、7号機の再稼働は基本的に価値がある」と認め、東海第2では再稼働に向けた安全工事のため、東電、東北電などによる資金支援が決まるなど、今月は前進があった。

 これまで再稼働をリードしてきた関西電力が金品受領問題で経営が混乱しているだけに、原発再稼働に向け、BWR陣営の取り組みが重要視される。(平尾孝)

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