中小企業へのエール

気候激変 「SDGs」念頭に具体的アクション必要

 □旭川大学客員教授・増山壽一

 10月に東京都内のホテルで、元米国副大統領にしてノーベル平和賞受賞者でもあるアル・ゴア氏による「クライメート・リアリティ・プログラム」が日本で初開催された。気候変動問題に取り組み、具体的な行動を起こす人材育成を目指すプログラムだ。私も、長くエネルギー環境問題に携わってきたことから中心的な役割を担って参加し、無事研修を終え認定書をいただいた。

 レセプションでゴア氏と話す機会があり、「実は22年前、京都議定書交渉のときに一度お会いしている」と自己紹介した。当時の私は政府交渉官の一人として、京都宝ケ池のホテルに2週間以上泊まり込みし、煮え切らない日本政府の対応を叱咤(しった)するために、何度も日本政府の交渉部屋に直接訪れて圧力をかけていたのである。今のトランプ政権を考えると時代は変遷すること感慨深い。この22年間にいかに世界の気候が激変し、地球が今壊れかかっているかという話でお互いに熱くなった。

 風速40メートル以上の大型台風、「Rain Bomb」(雨の爆弾)ともいわれる未曽有の大雨、夏の最高気温40度超え、これらが当たり前になると警告していた京都議定書交渉時の予測が既に現実となっている。二酸化炭素(CO2)濃度上昇、地球全体の平均気温の上昇による影響が、実は直線的でなく加速度的に表れている。

 現在、米国と欧州連合(EU)が京都議定書後のパリ協定をめぐり鋭く対立している。

 トランプ政権は、「アメリカ・ファースト」の名の下、石炭や石油といった化石燃料への規制をどんどん緩めて産業競争力を高めようとしている。まさしくゴア氏が進めていた政策の完全否定である。このような国家間の対立が激しくなればなるほど、NGO(非政府組織)の役割が重要となり、それがまたアメリカの層の厚さでもある。

 2006年にゴア氏が映画「不都合な真実」の中で話したことによって、国際的なNGO団体の行動は活発化し連携しているのである。日本でも気候変動問題というと、エネルギー経済界と環境団体との対立構造として捉えがちになるが、最近はSDGs(持続的な開発目標)として経済団体が主導的に取り組んでいることも国際的な機運の高まりを背景にしている。

 ゴア氏が語っていた。「より遠くに困難な場所に行くためには、多くの人と手をつないで、具体的に歩きださなければならない。そうすると必ず実現する」と。

 もう言い訳やスローガンだけでは地球はもたない。大企業も中小企業も、個人もみんなが具体的なアクションを起こすときである。

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【プロフィル】増山壽一

 ますやま・としかず 東大法卒。1985年通産省(現・経産省)入省。産業政策、エネルギー政策、通商政策、地域政策などのポストを経て、2012年北海道経産局長。14年中小企業基盤整備機構筆頭理事。旭川大学客員教授。京都先端科学大客員教授。日本経済を強くしなやかにする会代表。前環境省特別参与。著書「AI(愛)ある自頭を持つ!」(産経新聞出版)。57歳。

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