アジアにも影響
北米のEVピックアップ開発競争激化の動きは他にも波及するのであろうか。2つの地域で大きな影響が出てくると予想される。一つは中国である。昨年新エネルギー車が126万台販売され、今年もガソリン車低迷の中で、対前年比を上回る状況である。EV乗用車、EVバスと来て、その次はEVトラックと考えている企業も多く、またプラグインハイブリッド車(PHV)に比べ開発の難易度も高くないことから、北米の動きに啓発されるのではないだろうか。
もう一つはアジア諸国である。タイ、ベトナム、インドネシアなど販売台数の中でピックアップの比率が高い地域が多い。多くのアジア諸国もCO2削減を掲げており、乗用車でのゼロエミッション化を推進するものの、海外にてEVピックアップトラック開発の波が出てくると、これに同調する動きもあるのではないだろうか
一方、日系各社への影響はどうであろうか。北米やアジア諸国にてピックアップトラックを販売している自動車メーカーも多く、ひとごととは思えないのであろう。しかし、まだ様子見だと思って、ぼうっとしていると、あっという間に市場を奪われる可能性も出てくる。この動きは決して見過ごすことはできないように思われる。
ところで、テスラはEVピックアップ「サイバートラック」発表時、このクルマは堅牢(けんろう)性が高いとアピールしていた。しかし、サイドドアガラスに鉄球をぶつけたところ、ガラスにヒビが入り、メディアから失笑を買った。筆者としては、別にEVピックアップに防弾ガラスのような装備は必要なく、あえて話題作りか、新たなマーケティング手法かなと思ってしまう。
【プロフィル】和田憲一郎
わだ・けんいちろう 新潟大工卒。1989年三菱自動車入社。主に内装設計を担当し、2005年に新世代電気自動車「i-MiEV(アイ・ミーブ)」プロジェクトマネージャーなどを歴任。13年3月退社。その後、15年6月に日本電動化研究所を設立し、現職。著書に『成功する新商品開発プロジェクトのすすめ方』(同文舘出版)がある。62歳。福井県出身。