金融

貸しはがしの禁止は今や慣行 中小金融円滑化法10年、失効後も理念存続

 資金繰りに困っている中小企業の支援を目的とした「中小企業金融円滑化法」施行から4日で10年。2013年3月末に失効したが、法の精神は今も生き続け、融資の期限前に返済を迫る「貸しはがし」禁止は金融界の慣行になった。半面、再起の見込みがない企業を存続させ、産業界の新陳代謝を阻害したとの指摘もある。

 申し込み437万件

 円滑化法は、中小企業が借金の返済猶予を申し込んだ場合、金融機関は応じるように努力する義務があると定めた点が画期的だった。「モラトリアム(返済猶予)法」とも呼ばれた。

 主導したのは09年に発足した民主党政権で金融担当相を務めた亀井静香氏(83)。亀井氏は共同通信のインタビューで「(金融機関は)借り手がつぶれたら商売が成り立たないと気付いた。『貸しはがし』をやめる風潮をつくった」と円滑化法の成果を強調した。

 施行から失効までに中小企業から延べ437万件の返済条件変更などの申し込みがあり、金融機関は93%に応えた。失効後、申込件数は減っているが、金融機関が応じた割合は18年度が97%と高率を維持している。

 施行前に年間1万5000件程度で推移していた企業倒産は14年以降、1万件を下回っている。金融庁は失効後も「金融機関が円滑な資金供給や貸し付け条件の変更に努めるべきだということは何ら変わらない」としている。

 ゾンビ延命批判も

 一方、借金の返済を猶予された企業の倒産は増えている。18年度まで3年連続で前年度の倒産件数を上回り、19年4~10月は計299件と前年同期に比べ20%も増加した。円滑化法が、本来は市場から退場すべき「ゾンビ企業」の延命を手助けしたと批判される根拠になっている。

 ただ亀井氏は「見当外れだ」と反論し、「企業も銀行におんぶにだっこだと、最後は経営に行き詰まってしまう」と語った。返済猶予を受けた企業の倒産増加は、円滑化法が悪いのではなく、企業努力が足りないことが要因とみている。

 金融庁は円滑化法の失効後も、各金融機関に対し返済猶予実績の報告を求めてきたが、「借り手への配慮が定着した」(同庁)として、19年3月で休止した。ある大手銀行のベテラン行員は予測する。「円滑化法という『劇薬』の効果は薄れていく。体力がない銀行は不良債権の処理を急ぎ、企業倒産は増えていくだろう」

【用語解説】中小企業金融円滑化法

 資金繰りに窮している中小企業や多額の住宅ローンを抱える個人が、借金の支払い猶予や返済期間の延長などを申し出た場合、金融機関はできる限り条件の変更に応じるよう求めた法律。2008年のリーマン・ショックで経営が悪化した企業などの資金繰りを支える目的で、時限立法として09年12月4日に施行された。亀井静香金融担当相(当時)の「3年程度のモラトリアム(返済猶予)」構想が契機になった。法律は東日本大震災などもあって2度延長され、13年3月末に失効した。

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