金融

家計簿アプリや会計サービス停止も? フィンテックと銀行の契約完了わずか4割

 ITと金融が融合した「フィンテック」企業が提供する自動家計簿作成アプリや企業の会計支援といったサービスが来年6月以降、一部使えなくなる恐れが出てきた。法律により、フィンテック企業は銀行のシステムに接続を認める「オープンAPI」の契約を来年5月までに結べなければ、これまでのサービスが継続できなくなる。この契約の可否がフィンテック企業の死活問題に直結するが、現状で契約を結んだ銀行はわずか4割にとどまっている。

 自動家計簿アプリを展開するマネーフォワードやスマートフォン決済を手がけるペイペイなどに代表されるフィンテック企業は、顧客から銀行のパスワードなどを提供してもらい、出入金記録を活用することでサービスを提供している。

 ただ、銀行側からはサービス利用にあたり、顧客情報の流出を懸念する声が多かった。そのため、国は平成29年に銀行法を改正し、安全にデータを連携できるよう、金融機関がシステムへの接続仕様を公開し、契約を結んだ上でアクセスを認めるオープンAPIを導入。フィンテック企業などに対し、令和2年5月までに各銀行と個別に契約を結ぶことを義務づけた。

 金融庁は銀行のシステムをフィンテック企業に開放すれば、多様な金融サービスの開発につながるとして各行に契約を急がせている。だが、金融庁が11月に発表した調査結果では、9月末時点で1社以上のフィンテック企業とオープンAPIの契約を結んだ銀行は130行のうち約4割の57行にとどまった。契約交渉中を合算すれば122行と9割以上にのぼるが、交渉は難航している。

 資金洗浄対策などシステム構築に多大なコストをかけてきた銀行は、オープンAPIに対応したシステム改修にも数億円から数千万円をかけているとされ、「フィンテック企業に無料でシステムを開放するのは不満がある」(大手銀行幹部)のが本音だ。費用回収のため、契約交渉ではアプリに送金する際に事業者が銀行に支払う手数料などの引き上げを求める動きもある。

 一方、中小規模が多いフィンテック企業は、「各銀行との連携対応で人材も足りない中で、手数料の引き上げは大きな負担になる」(東京都内の企業)と反発。ただ、比較的規模の大きい企業では銀行側の要求を受け入れ始めており、企業規模で対応には濃淡もみられる。(西村利也)

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