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パナソニック、中国で16年ぶりに家電の新工場建設へ 中間層拡大にらむ

 パナソニックは6日、中国・浙江省に電子レンジや炊飯器などの調理家電を生産する工場を新設すると明らかにした。投資額は約45億円を見込んでおり、2021年度に操業する。中国で家電工場を建設するのは16年ぶり。米中貿易摩擦の影響で生産拠点を中国以外の地域に移管する動きが目立つ中、中間層が拡大する中国は今後も需要の伸びが期待できると判断した。

 新工場は浙江省嘉興市に建設し、敷地面積は約5万平方メートル。工場を運営する新会社を設立し、商品の企画・開発機能も持たせる。中国人技術者を多く採用し、IoT(モノのインターネット)技術を搭載した製品の開発に力を入れる。

 同社はすでに上海、杭州などの工場でも調理家電を生産しており、シェア拡大を図る。新工場で生産する調理家電は中国以外のアジア圏にも輸出し、22年度の売上高は約20億元(300億円)を見込んでいる。

 パナソニックが16年ぶりに中国に家電工場を新設するのは、インターネットにつながるIoT家電などで先行する中国での競争力を高めるためだ。約14億人を抱える巨大市場への期待感は大きく、グループ全体の成長につなげる考え。ただ、現状では中国の家電事業は現地メーカーに押されており、もくろみ通りに進むかは不透明だ。

 「中国市場で勝てなければパナソニックの将来はない」。津賀一宏社長は繰り返しこう訴えてきた。家電の次の稼ぎ頭になると見込んだ車載事業が伸び悩む中、家電と住宅設備を組み合わせたスマートホーム事業に力を入れている。その最重要市場が中国だ。今年4月の組織改編では、社内カンパニーの「中国・北東アジア社」を新設した。

 ただ、中国市場でのパナソニックの存在感は低い。家電の売上高は2019年3月期で約130億元(2千億円)とシェアは数%。過去にテレビの生産から撤退したことに加え、白物家電でもハイアールや美的集団など価格競争力の高いメーカーに押されている。

 それでも「シェアが低い分、まだまだ拡大の余地がある」(広報担当者)と強気の構えだ。将来的には中国で開発・販売したIoT家電を日本などで展開する構想も練る。液晶パネル、半導体と次々に撤退を決めたなかでの積極投資。新たな成長の柱となるか、今後の同社を占う試金石となりそうだ。(林佳代子)

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