セブン残業代未払い

18年前の非公表原因「詳細分からず」

 記録が残る分だけでも約3万人の残業代一部不払いが明らかになったセブン-イレブン・ジャパン。永松文彦社長は10日、約1時間半に及んだ記者会見で「重ね重ね深くおわび申し上げる」と謝罪を繰り返し、真摯(しんし)な姿勢をみせた。だが、18年前にも不払いの指摘がありながら内部処理しかしていなかったという問題の根源は「調査したが詳細が分からない」として不明のまま。約45年前の創業当初から不払いが続いていた恐れも高まり、問題の全容が判明したとは言い難い状況となっている。

 「2001(平成13)年以前にも今回のご指摘と同様に残業代一部不足が発生しており、支払いや公表がされていなかった。合わせて深くおわび申し上げます」。会見始めでの永松氏の発言で、問題の根深さが浮き彫りになった。

 問題は、(1)今年の労働基準監督署の是正指導で明らかになった残業加算の計算誤りにとどまらない。(2)18年前にも労基署から別の計算誤りの指摘があったにも関わらず計算式を変更する内部処理のみで未公表だった、(3)18年前に支払いをしなかったために不払い者の対象特定や金額計算が一層困難になった-という点も加わった。このため、不払いが昭和48年の創業当初からあった可能性が高まったのだ。

 (1)の対象者は、現在の在籍者内では「4・5%の構成比」(眞野義昭人事本部長)で22人に1人。記録が残る平成24年3月以降での最高額は280万円、平均1万6千円という。だが、計算式を変更した平成13年当初からの金額などを問われると「辞められた方からの連絡をお待ちする状況で、今の段階ではなんとも分からないのが現状」と永松氏は苦しい表情を浮かべた。さらに(2)以前となると、「昭和53年に(計算誤りの対象となった手当てが)追加されていることしか把握できていない」(石丸和美執行役員)という。

 法令上は時効があるものの「われわれの瑕疵(かし)であり、オーナーさまの責任はない。誠心誠意尽くす。期限は切らない」と強調したが、働く人々が受けた不利益額がどれだけ膨らむかは不明だ。

 働いていた人が対象者と申告するための手立てを問われると「心苦しい限りですが」と前置きしつつ「給与明細など、働いていたことがきちっと確認できるものをご提示していただきたい」と説明。コールセンターなどで詳しく対応するとしたがハードルの高い要求となる可能性もあり、実際の受け取りまでには紆余(うよ)曲折も予想される。

 一方、(2)で内々に変更した計算式も誤りだったことで(1)が引き起こされたという不手際が重なっている。計算式誤りが長年判明しなかった理由について、石丸氏は「担当者の法令理解が不足していた上、チェック体制も整備されていなかった」と説明。永松氏は「法令順守を軽視したことはない」と話したものの、社会保険労務士など外部専門家による計算式チェックはこれまでしていなかったという。

 質問が集中したのは、(2)の当時に公表や支払いがされなかった理由だ。

 永松氏は「当時も公表されるべきだった。稟議(りんぎ)書や議事録など書類を見たほか、私自身も現在在籍している社員へ聞き取りした」とし、調査を尽くしていると強調。鈴木敏文名誉顧問にも自ら話を聞いたと明かした。だが「(鈴木氏は)今回の件はまったく承知していなかった」といい、役員会資料などにも記載はなく「詳細は現時点では分からない」と繰り返すばかりとなった。

 記者からは「本当に単純ミスなのか。金額を抑えたい意識があったのではないか」との疑念も。永松氏は「意図してではなかったのではないか、と私自身は信じている」とうつむいたが説得力を欠いており、「執念深く調べていくのが私の役目」と調査は続けていく考えを示した。

 セブン-イレブンをめぐっては、24時間営業をめぐる対立、9月末で廃止されたスマートフォン決済「セブンペイ」の不正利用事件、本部社員による商品無断発注など問題が続出、加盟店オーナーとの信頼関係に黄信号がともる。「辞任のお考えはないか」との厳しい質問も飛ぶなか、永松氏は「創業から約45年での大きな環境変化に対し、私どもが変わってこれなかった」との分析を語り、「今までを是とせず改革していく決意。役員や社員全員でもう一度、フランチャイズ本部のあり方、加盟店オーナーへ提供すべきサービスなどを根本的に見直す」とした。

 改革の方向性については「最も重要なのは信頼関係とオーナーとのコミュニケーション。会議や担当者の仕事、資料などのあり方などすべてを改善していっている段階だ」と話した。

 永松氏は会見最後にも改めて自ら立ち上がり、頭を下げて謝罪したが、司会が何度も「質問は1人1回限り」と繰り返して制限を設けるなか、問題が起きた原因の多くは未解明のまま残っている。(今村義丈)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus