今後の焦点は、販売が落ち込んだままの状況がどこまで続くかだ。日本郵政グループは、不利益の疑いのある保険契約(約18万3000件)の実態調査を進めており、調査報告を年内にまとめる。さらに、年内には弁護士で構成する特別委員会の調査報告や、9月から立ち入り検査を行っている金融庁の行政処分もある見通し。これを区切りに、年明けからの保険販売を再開したい考えだ。
しかし、ここにきて雲行きがあやしくなっている。11月19日の衆院総務委員会で、かんぽ生命の植平光彦社長は、実態調査が年内に終わるかを問われ、「意向確認の数を年末に向けて最大限増やしたい」と述べるにとどめた。
もともと、年内に予定するのは最終報告だったはずだが、9月末に契約時の状況などを顧客に確認できたのは全体の4割。顧客対応の体制を増強して取り組んではいるが、件数が膨大なこともあり「なかなか面会できなかったりしており、苦戦している」(関係者)。残り6割について顧客の意向を確認する調査を終えられない可能性も出てきた。
仮に調査を終えられなかった場合、日本郵政グループは販売自粛解除にどのような判断を下すのか。途中段階の調査を踏まえた原因究明や再発防止策のままでは、顧客や従業員の不安が解消されない。それを区切りとして販売を再開するのは、「見切り発車」との批判が再び強まりかねない。
11月の決算会見では、販売が減少しても業績に即座に影響しないことを踏まえ、記者から「改善策を徹底できるようになるまで、自粛を続けるべきではないか」との指摘もあった。これに対し、日本郵政の市倉昇専務執行役員は「慎重に顧客本位の活動をしたい」と言葉を濁した。
日本郵政の長門正貢社長は、9月末の会見で「一人残らず、最後の1円まで不利益を戻す」との顧客対応方針を打ち出した。実態調査の進展が芳しくない中で、販売再開をめぐるジレンマに再び悩まされそうだ。(経済本部 万福博之)