所有する車を貸し出した日数分だけ他の人の車を無料で借りられる、「物々交換」方式の新たなカーシェアリング事業を10日、電通の社内ベンチャーから生まれた「カローゼット」が全国で開始した。電通初の「CtoC(個人間取引)」サービスの100%子会社となるカローゼットの内藤丈裕社長は、東京都内での発表会で「互助の精神で、『所有』の価値を会員全体で高め合う全く新しいサービスだ」と、既存事業との違いを強調した。
カローゼットはアプリによる会員間仲介システム。利用権は1日単位で、自分が車を貸した日数分しか付与されない。借りる場合は相手と対面で自分の車を代わりに預ける、まさに物々交換の形。車の所有者で、借りた車で事故を起こしたときも補償される「他車運転特約」付き自動車保険の加入者に限るなど会員資格を厳格化することで、安心・安全に配慮したという。
利用の心理的ハードルを下げるため、自動車販売会社など「プロオーナー」の試乗車も登録されており、販売店に自分の車を預けることでも利用できる。利用権が足りない場合は後日の貸し出しを約束する「前借り」も可能。30日以内に貸せなければ、1日当たり4980円をカローゼットに払うことで清算する。カローゼット側はこの清算金と、システム利用料月額780円(来年5月までは無料)で利益を上げる考えだ。
ただ、貸し借り時は利用者間で免許証などで本人確認を行うため一定のプライバシーを開示し合う必要があり、自分が車を持って行ける範囲でタイミングが合うときに限られる-などのデメリットもある。内藤社長も「許容できない方にはご利用は難しいかもしれない」と認める。だが「顔が見えて直接対面した方が安心できる、乗り慣れない人に貸すという通常の個人間カーシェアの不安がない、といった声もいただいている」と強調。「貸す側が偶然に他の車に出合う喜びも生まれる」と話す。
全国で利用可能だが、協業先の三菱地所や大和ハウス工業、パナソニックなどが手掛ける街づくり事業の住民らに周知していくという。アプリは当初はiPhoneのみ。アンドロイド版は今後の利用状況をみながら検討するとしている。
また、金銭授受のない個人間シェアとしてビジネスモデルの国際特許も出願中。“向こう三軒両隣”で助け合う日本発の発想によるシェアビジネスを、本や不動産などにも広げ、世界展開も目指したいとしている。