中小企業へのエール

「なつぞら」の十勝 日本人観光客迎える目線も忘れない

 旭川大学客員教授・増山壽一

 今年前半の朝のNHK連続テレビ小説は、広瀬すずさんが主演の「なつぞら」であった。広瀬さんの好演ももちろんであるが、最初から最後までその成長を見守った草刈正雄さんの演技が、開拓民として北海道・十勝に入植して辛酸な苦労をした人物の厚みというか温かみを表していて、北海道に縁を得た私としては、胸が熱くなるドラマであった。

 先日、久しぶりにその十勝を訪れた。用務は、科学の力で十勝の土づくりから見直そうというプロジェクトを先導するためである。東京工業大と帯広畜産大が共同して、畜産と農業を科学の力でつなげて、今一度土地を豊饒(ほうじょう)にする、そんなプロジェクトを立ち上げるべく帯広へ向かった。

 確かにドラマの舞台でも、かつては牧畜と農業は相互依存関係にあり、畑の飼料を食べる牧畜の糞(ふん)尿が、肥沃(ひよく)な農地の源でもあったのだ。

 しかし昨今、飼料は海外輸入、糞尿は邪魔者として産業廃棄物扱い、畑には短期的な収穫増を求めて、化学肥料をまく。この繰り返しをしいて持続性が失われているのではないか、そんな思いでこのプロジェクトに取り組んでいるのである。

 この話をはじめると、大学の数コマの授業となるのであるが、それはまたの機会で。

 さて、飛行場から市内に向かうバスの中。突然。なつぞらの主題歌「優しいあの子」(スピッツ)のメロディーが流れてきた。そして、この曲に乗せられて、この十勝のすばらしさや途中に通る幸福駅の由来など、観光ガイドもしてくれて、うきうきした気分になった。

 このバスは、北海道のみならず日本の観光業界でも数々の先駆的な試みをして成功に導く「十勝バス」だと気づき、これまで日本のほぼ全ての空港を利用してきた私であるが、まさに一番ほっとするバスであった。

 最近では、インバウンドの増加に合わせて、英語、中国語、韓国語でアナウンスするようになった空港連絡バスであるが、どれも無機的で愛想がない。また、日本人の観光客はあまり歓迎されず、インバウンドだけがもてはやされているようで、いつも少し悲しく感じていた。しかし、十勝バスは違っていた。

 日本の地方都市に到着して、最初の交通手段の一つであるバスは、日本人外国人に関係なく、心に残るメロディーでお迎えをするこんなおもてなし、さすが十勝バスだと思った次第である。地方における観光も、日本人を迎える目線も忘れてはならない。

【プロフィル】増山壽一

 ますやま・としかず 東大法卒。1985年通産省(現・経産省)入省。産業政策、エネルギー政策、通商政策、地域政策などのポストを経て、2012年北海道経産局長。14年中小企業基盤整備機構筆頭理事。旭川大学客員教授。京都先端科学大客員教授。日本経済を強くしなやかにする会代表。前環境省特別参与。著書「AI(愛)ある自頭を持つ!」(産経新聞出版)。57歳。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus