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映画興収過去最高へ、動員も2億人迫る メガヒットの陰で単館苦戦

 今年の国内映画興行収入(興収)の総額は、新海誠監督のアニメ「君の名は。」が社会現象化した2016年(2355億円)を上回り、過去最高の2550億円前後に上る見通しとなった。複数のヒット作が総額を押し上げ、理想的に見えるが、ミニシアター系作品は苦戦が続いている。

 「邦画洋画とも魅力ある作品がそろった。東宝も歴代2位の非常に満足いく数字となりました」。今年最大のヒット作「天気の子」(新海監督、140億円)を配給する東宝の松岡宏泰常務は12日の記者会見で語った。

 東宝配給作品では他にアニメ「名探偵コナン 紺青の拳(フィスト)」が93億円、「キングダム」と「ドラえもん」の新作が50億円を超えた。

 引っ張るディズニー

 興収100億円超は11月末時点で「天気の子」とディズニーの「アラジン」(121億円)、「トイ・ストーリー4」(100億円)の3作だ。11月22日公開の「アナと雪の女王2」の勢いもすさまじく、公開17日で早くも60億円を突破した。

 「ディズニーの国内興収は18年が年間で266億円だったのに対し、19年は10月末で424億円に達し、最終的には500億円を超えるでしょう。ディズニーのヒット連発が、過去最高の興収総額となる一番の要因です」と映画ジャーナリストの大高宏雄さんは言う。

 「アベンジャーズ エンドゲーム」「ライオン・キング」など今年は特に粒ぞろい。大高さんは、背景には11月に米国で動画配信サービス「ディズニー+(プラス)」が始まったこともあるとし、「新規参入で負けるわけにいかず、多くの話題作を作っておく必要があったのでは」とみる。

 今年は多くの映画館で入場料金が値上げされたが、観客動員数は昨年の1億6900万人から大幅に増え、「1億9000万人前後」(東宝)になる見込み。松岡常務も「映画界の目標である2億人を狙えると感じることができた」と述べた。

 極端なシネコン集中

 一方、近年は観客がヒット作に極端に集中する傾向があり、ミニシアター系作品を取り巻く状況は厳しい。洋画の配給関係者は「シネコン(複合映画館)にヒット作が集中し、あふれた大手の作品がミニシアターにも入ってくる。昔は3、4週間は上映してもらえたのが、最近は良くて2週間。1週間だけで1日1回の上映もある」と嘆く。

 観客が見たいヒット作を上映するのは当然であっても、映画には文化の側面もある。日本大芸術学部の古賀太教授(映画史)は「フランスや韓国では国がアート系映画館に助成金を出している。日本では映画の上映は商売だから助成金がなじまないという考え方だが、多様性のある映画を上映する映画館を守るには業界の努力だけでは限界。興行への助成を考える必要がある」と指摘した。

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