手軽に楽しめる缶入り酎ハイやハイボールの人気に押され、ブームが一服した本格焼酎業界の前年割れが続いている。メーカーは巻き返しに向けて主な愛飲者の中高年層以外に消費者を広げようと、女性や若者を意識した新機軸の商品や販売手法に力を入れている。
国税庁によると、2017年度の焼酎の国内消費量は81万6000キロリットルと4年連続で減り、「焼酎ブーム」の影響で過去最高となった07年度より約19%減った。帝国データバンク福岡支店情報部の晨智海さんは「新しい商品や提案を打ち出し注目度を上げるのは重要だ」と指摘する。
浜田酒造(鹿児島県いちき串木野市)は香りを楽しめる本格芋焼酎「だいやめ」を昨年9月に発売。独自の蒸留技術でライチのような香りを実現し、従来前面に出していたお湯割りではなく、ハイボールのように炭酸割りで飲むことを薦める。1800ミリリットル入りで2453円。浜田雄一郎社長は「香水などを使う女性の社会進出が進み、若い男性らも香りを重視するようになった。新機軸の焼酎で新たな顧客層を開拓したい」と意気込む。
霧島酒造(宮崎県都城市)もハイボール人気などで酒を炭酸水で割る飲み方が身近になったとして、「黒霧島」などの同社製品を炭酸割りで味わうことをテレビ広告などで提案する方針だ。
雲海酒造(宮崎市)は「甘み」に注目し、独特な甘みを生む酵母を使った焼酎「木挽BLUE(ブルー)」の全国展開を17年に始めた。市場調査で酎ハイやカクテルの甘い味付けに慣れた若者や女性が本格焼酎にも「甘み」を求めていると分析し、女性層に人気の女優、吉田羊さんを広告に起用して売り上げを伸ばしている。増田幸夫取締役は「他社がまねできないような甘さと爽やかさを実現し、狙った層に受け入れられた」と語る。
「開けてすぐ飲める」を意味する英語「レディー・トゥー・ドリンク」の頭文字から「RTD」と呼ばれる缶酎ハイなどの人気にあやかろうと、大口酒造(鹿児島県伊佐市)は200ミリリットルのカップ入りの本格焼酎「ショットバー」の販売に力を入れている。低アルコール飲料を好む若年層や女性をターゲットにし、水割りにしてアルコール度数を13度に抑えた商品は220円。担当者は「花見やキャンプに気軽に携帯してほしい」と話す。