SUBARU社長・中村知美さん(60)
--完成検査問題の再発防止対策の状況は
「国土交通省に今月、6回目の進捗(しんちょく)報告をした。計65項目のうち63まで運用できている。残りは外部評価などだが、年度内には終わらせようと思う。完成検査の班の数や管理スパンなども全部見直し、落としていた製造ラインのピッチは9月から正常に戻した。順調だ」
--リコール(回収・無償修理)が相次いで今期の通期業績予想を下方修正するなど、品質が課題だ
「昨年の社長就任後に策定した2025年までの中期経営計画で『品質改革』を第一に掲げたのは、完成検査問題からではない。米国で仕事をしていて、リコールが増えている、どうもおかしい、スバルブランドは安全・安心が根っこのはず-という危機感があった」
--どう改善しているのか
「まずは新車生産時点の品質。開発プロセス、部品購買プロセスなどを見直している。既に販売した車は不具合の初報から原因究明、リコール実施に至るスピードを上げようとしている。だがリコールを完全になくすのは難しい。最近増えているのはプログラムバグなど、ソフトのリコール。スマートフォンと一緒だ」
--次世代技術進展で研究開発費が高騰している
「これから巡航速度に入ろうとしているが、今は電動化と既存技術の双方に力を入れなければならない過渡期で負荷が高い。電動化市場が一番きっちり形成されているのは日本のハイブリッド車(HV)だけで、電気自動車(EV)は中国でもまだ数%程度で行方は不透明だ」
--対応策は
「トヨタ自動車とのアライアンスの活用だ。(通信でつながる)コネクテッド分野が好例。バックグラウンド機能の開発では、うちも両社とも基本的に同じことをしている。ここを一緒のプラットフォームにしようと。EVも共同開発するなど、今後も効率化を進める」
【プロフィル】中村知美
なかむら・ともみ 慶応大法卒。1982年富士重工業(現SUBARU)入社。主に営業畑を歩み2009年戦略本部経営企画部長。14年常務執行役員で米国販売会社会長。16年に同会長のまま専務執行役員に昇格。18年3月から現職。東京都出身。