観光庁は、地域の経済や環境などに配慮した「持続可能な観光」を自治体に実現してもらうための指標を年度内に作成、来年度初めに公表する。指標にはオーバーツーリズム(観光公害)対策や再生可能エネルギーの利用促進などを盛り込む方針。持続可能な観光は、世界的に旅行者に注目されているテーマで、訪日客の増加や消費額の拡大が観光庁の狙いだ。
持続可能な観光を実現するためには、観光客の増加で地元住民の生活に悪影響を及ぼす「オーバーツーリズム」への対策だけでなく、宿泊施設運営者やツアーガイドなどの担い手確保や、古民家など観光資源の維持管理といった「さまざまな要素を満たす必要がある」(観光庁関係者)。
そのため、指標には「観光地開発に伴う地価の影響を把握しているか」などの観光公害関連のほか、「歴史的建築物の景観を保全する計画があるか」「観光地に生息する絶滅危惧種の一覧が作成されているか」など環境保全の事項も盛り込む方向だ。指標は、国連機関などの国際機関で構成する世界持続可能観光協議会(GSTC)が定めた指標を参考にしており、日本版の指標完成後はGSTCから承認を受けて海外にPRする。
旅行予約サイト運営大手のブッキング・ドットコムによると、持続可能な観光に対する意識は、日本以外の海外旅行者のほうが高く、同社の調査に「旅行中に可能な限り徒歩や自転車を利用する」と回答したのは、日本を除く海外の旅行者の過半数に達したという。
各自治体への指標の普及に向けては、持続可能な観光地の表彰や「持続可能な観光地」のロゴマークの付与といった方策を検討する。(大坪玲央)
持続可能な観光指標案の主な事項
担い手や資源の確保
・伝統文化の次世代継承を支援する取り組みがある
・文化遺産の保護に関する計画や規制がある
オーバーツーリズム対策
・観光開発による地価や家賃への影響を把握している
・観光客が要因の混雑の対応策を講じている
環境対策
・絶滅危惧種の生息地を把握している
・環境負荷の小さい交通機関の利用を促進している