ワークスタイル最前線

社内バーが統合2社橋渡し 異なる社風の融和に一役

 会社内にバーや昼寝部屋、ゲームコーナー…。働く場であるオフィスに一風変わった施設を置く大企業が増えている。組織の融和や企業イメージの向上など、狙いはさまざまだ。新しいオフィスの潮流は日本企業の働き方に変化をもたらすか。

 社外イメージ向上

 「乾杯!」。12月上旬の平日夕方、東京都品川区にあるセガサミーホールディングス本社の社員食堂では、管理職の社員十数人が研修後の打ち上げを開いていた。昼間はカフェとして営業しているコーナーが、午後5時以降はビールやカクテルを出すバーに変わる。

 「発言に気を付けないといけないところはあるが、他の部門の人とも交流できるのがいい」。こう話すグループ会社社員の加賀屋祥之さんは、週に1度は利用するという。バーの近くにはダーツやビリヤード台が並び、漫画から実用書までさまざまな本をそろえた読書コーナーもある。

 セガサミーは、パチンコ機大手のサミーとゲーム大手のセガが2004年に経営統合して誕生した。統合後もそれぞれの旧社屋に分かれていたが、19年2月に新本社への移転を完了させた。

 グループ総務統括部の竹山浩二統括部長は「統合の相乗効果が発揮しきれておらず、何か仕掛けが必要だと思った」と語る。社風の異なる旧両社の融合のため特定の地方にゆかりのある社員を集めた飲み会や、人気のマグロ解体ショーを食堂で積極的に企画している。

 うどんの「丸亀製麺」チェーンなどを運営するトリドールホールディングスは9月、東京都渋谷区に本社を移した。移転を機に固定の席をなくし、好きな席で仕事をする「フリーアドレス」を採用。椅子や机はあえて画一的なオフィス家具ではなく、場所によって違うものを取りそろえ、カフェのような雰囲気だ。

 中でも目を引くのが、床に座ったり寝そべったりできるスペースや、「シエスタルーム」と呼ばれる昼寝部屋。照明を落とした部屋にベッドが3台置かれ、それぞれがカーテンで仕切られている。1回の利用は20分までと決まっている。

 人材定着も狙い

 トリドールの西島竜ブランドマネージャーは「従来のオフィスでは発想の飛躍につながらない」と強調する。社内の休憩部屋や娯楽施設は外資系企業やベンチャー企業が先行してきた。「採用活動時、そういう企業にオフィス環境でひけを取りたくない」とイメージ向上の狙いも込める。こうした取り組みについて、博報堂生活総合研究所の夏山明美主席研究員は「終身雇用が崩壊しつつあり、転職が当たり前になる中で人材の定着が課題になっている」と背景を分析。賃上げは経営側の負担が大きく、人材確保に向けて「他の方法で魅力の向上に努める側面もあるのではないか」との見方を示した。

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