ビジネス解読

電話線から英国王室を魅了するキャビアへ 下町の中小企業に学ぶ「畑違い」 (2/2ページ)

 金子氏は「V字回復をもたらした医療事業に成長余地はまだある。しかし、いずれ廃れる」と判断。同時に次世代に「ゼロからイチを生み出すDNAを渡したい」と考え、創業80周年を終えた25年度から100周年に向けて第3の柱づくりに着手。27年度にゼロから新規事業を生み出す「ゼロワン・プロジェクト」を立ち上げた。

 事業創出の担当者に出した条件の一つが、事業が軌道に乗るまで10年くらいかかること。金子社長は「上場企業トップの在籍期間は平均6.2年。何年たっても収益化しない事業を株主に認めさせるのは難しいので、10年かかるなら大手にまねされない。オーナー企業の特権」と言い切る。

 担当者に半年ほど旅をさせ、探し出したのがキャビアだった。電話線からカテーテル用チューブ、そしてキャビア-。代替わりごとに畑違いの事業分野に参入し、事業の柱に育てる。新規事業への挑戦といえば既存技術を生かせたり、早期黒字化が見込めたりすることが前提となるが、こんな常識を無視して成功をつかんだ。(松岡健夫)

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