日本郵政グループは26日、かんぽ生命保険の不適切販売問題で辞任する日本郵政の長門正貢社長(71)の後任に増田寛也元総務相(68)を充てる方針を固めた。年明けに就任する方向だ。経営陣を刷新し、抜本的な改革に取り組む。
かんぽ生命の植平光彦社長(63)と保険の販売を手掛ける日本郵便の横山邦男社長(63)もそろって辞任し、かんぽ生命の社長には千田(せんだ)哲也副社長(59)、日本郵便には日本郵政の衣川(きぬがわ)和秀専務執行役(62)と、いずれも旧郵政省出身のグループ幹部の就任が固まった。
27日に金融庁と総務省による行政処分が決定するのを受け、各社の取締役会で正式に決める。総務省の事務次官を事実上更迭された鈴木茂樹氏から、検討中の行政処分案を聞き出していた日本郵政の鈴木康雄上級副社長(69)も、長門氏らとともに辞任する。
増田氏は旧建設省(現国土交通省)出身。岩手県知事を3期務めた後、第1次安倍晋三改造内閣、福田康夫内閣(改造含む)で総務相に就任、その後は郵政民営化委員会委員長も歴任した。郵政グループが顧客の信頼を回復し、再生に向かうには、ガバナンスや企業風土の改革が急務となる。グループの体制や問題点に明るい増田氏に巨大組織のかじ取りを託す。
金融庁は今月13日まで約3カ月間に及んだかんぽ生命と日本郵便への立ち入り検査で、多数の保険業法違反などを確認しており、両社に対し新規の保険販売業務を3カ月間停止する行政処分を出す方針。日本郵政にもコーポレートガバナンス(企業統治)が不十分だったとして業務改善命令を出す方向だ。経営責任の明確化も求める。こうした行政処分を踏まえ、トップの辞任は避けられないと判断した。
郵政グループが18日に公表した不適切販売問題をめぐる社内調査結果で、過去5年で保険料の二重払いなど顧客に不利益を与えた疑いがある約18万3千件の契約のうち、法令や社内規定に違反した疑いがある契約は1万2836件だった。調査は完了しておらず、違反件数がさらに増えるのは必至の情勢となっている。