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プラモ箱絵第一人者の高荷義之さん、前橋文学館で原画展 1月13日まで

 第二次世界大戦当時の戦車や軍艦、戦闘機、アニメメカなどを描き、プラモデルのボックスアート(箱絵)の第一人者で知られる前橋市の画家、高荷(たかに)義之さん(83)の原画を集めた「ドラマチックな重鋼(じゅうこう)!! 高荷義之原画展」が前橋文学館(同市千代田町)で開催中だ。超絶技巧の筆遣いで非現実の世界へ少年たちを誘い、虜(とりこ)にしてきたクリエイターの軌跡を紹介している。

 立ち上る黒煙、どっしりと重厚な存在感を放つ戦車、緊張した面持ちの兵士たち-。

 代表作の一つ、タミヤ1/25デラックス戦車シリーズ「ドイツ陸軍重戦車タイガーI型」(昭和44年)の精緻な描写と劇的な構図は息をのむほどの戦場の緊迫感と臨場感を生み出している。

 高荷さんは幼い頃から絵を描くのが好きで、少年雑誌の伊藤彦造や高畠華宵らの挿絵の模写に熱中した。

 「誰かに習ったわけでななく、ひたすらペン画を描いていた」

 前橋高を卒業した昭和29年、冒険科学もので絶大の人気を誇った小松崎茂の門下生に。その年のうちに早くも独立した。

 「小松崎さんは信じられないスピードで描いていた。まねができる絵ではないし、手伝うといっても、水彩画の筆洗(ひっせん)の水を取り換えるぐらいだったね」

 昭和30年代の戦記ブームの到来で、戦車や軍艦、戦闘機などを描いた挿絵やプラモデルの箱絵で売れっ子に。39年から故郷・前橋を拠点にするようになった。

 「動物を描くのが好きだったけど、未来志向のピカピカとした乗り物なんかを描いている小松崎さんのところにいたんだから描けるだろう、と思われたのかもしれない」

 昭和50年代以降は「戦闘メカ ザブングル」「機動戦士ガンダム」「超時空要塞マクロス」などのアニメメカのイラスト、パソコンゲームの箱絵も手掛けた。

 展覧会では、アニメ雑誌の口絵や箱絵のカラフルな原画が並ぶ。森や砂漠、宇宙などを舞台に登場するメカたちは質感がリアルで、実に生き生きとしている。

 「目まぐるしくニーズが変わっていった。ロボットが飛行機に変形しちゃったり。流行についていくだけでも大変だったね」

 長女、みゆきさんからは「美しい女性を描くのだけは下手くそ」と指摘されているが、「興味があるのと、描かないというのは全然違う(笑)。でも、瞳に星を入れるような少女趣味は昔からない」。

 時代が変わって出版物に載る挿絵は少なくなり、プラモデルブームも下火になって久しい。

 「僕のジャンルは戦争ものとか、浮き世離れしたサブカルチャー。真面目すぎる前橋の人間がどうやって食いつくか」と困惑気味に話すが、作品は理屈抜きでかっこよく、全く色あせていない。令和世代の感性にも突き刺さるはずだ。

(宇野貴文)

 来年1月13日まで。入場無料。開館は午前9時~午後5時(入館は閉館30分前まで)。水曜と29日~1月3日は休館。問い合わせは同館(027・235・8011)。

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