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「マジンガーZ」格納庫の総工費をはじく 常識破りのプロジェクト秘話 (2/2ページ)

波溝康三

 社内には敵ばかりではなかった。これまで、数々の高層ビルやダムなどを手掛けてきた建設会社のプロフェッショナルたちが立ち上がり、ファンタジー営業部の味方となってくれたのだ。

 企業イメージの向上

 「ファンタジー営業部」発足後、同社のHPのネットのヒット数は飛躍的に増大し、新聞や雑誌、テレビなどのメディアでも取り上げられ、2013年には、舞台化もされている。

 また、多くの学生たちの関心を呼び、リクルートの面でも大きな効果が現れ始めた。さらに、顧客にもファンタジー営業部のファンが増え、仕事の発注に結び付いたケースも少なくないという。

 マジンガーZの格納庫の設計を終えたファンタジー営業部の勢いは、そこで止まらなかった。

 「目標だった、これまで建設業界に興味のなかった層の関心を呼び起こすことができたんです。ならば、もっと夢を広げてみよう…」と岩坂さんは、さらにアイデアを募った。

 「銀河鉄道999」の地球発信用高架橋の建設費は37億円、「機動戦士ガンダム」のジャブロー基地の建設費は2532億円…。

 同営業部では、マジンガーZの格納庫の見積もりを出した後も、次々とSFアニメに登場する施設をテーマに選び、設計から開発までの見積書を手掛け、工期や総工費を算出していき、その活動は社内外で広く認知されていった。

 「建設会社の仕事は、ただビルなどを建設するだけではない…」。ファンタジー営業部を創設した岩坂さんの理念だ。現在、岩坂さんが力を入れて取り組んでいる仕事の一つが、建設業の枠を超えたインフラ作りだという。

 「既成概念にとらわれない自由な発想が、いつの時代も建設業界には求められていると思います」

 ファンタジー営業部の理念は、突拍子のない発想ではなく、現代の企業にこそ、求められている「仕事の理念」であることを証明しているのかもしれない。

波溝康三(なみみぞ・こうぞう) ライター
 大阪府堺市出身。大学卒業後、日本IBMを経て新聞記者に。専門分野は映画、放送、文芸、漫画、アニメなどメディア全般。2018年からフリーランスの記者として複数メディアに記事を寄稿している。

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