経済インサイド

深刻な台風で保険金1兆円超 火災保険料値上げ濃厚、被害ない家庭にも“ダメージ” (2/2ページ)

 修理の見積書ができれば、保険金請求書、事故内容報告書、災害を証明する写真とともに保険会社に送付。その後、保険会社から調査員(鑑定人)が来て損害額を確定した上で、保険金が支払われる-というのが申請から保険金支払いまでの流れになる。

 通常、火災保険の保険金の支払いは申請から1カ月程度が基本とされる。しかし、「今回は、河川氾濫などの水害に対応した火災保険『水災補償』に絡む被害が多く、見積もり業務も難航しており、1カ月で支払うのは困難な状態だ」(損保大手)という。

 水災補償の診断は特に難しい。水災の損害保険金が支払われるのは、一般的に建物が床上浸水か地盤面より45センチを超える浸水となった場合、または建物や家財の損害額が同等の物を新たに建築、購入するのに必要な金額が30%以上の場合だ。診断条件が細かい分、時間もかかるため「規模の大きさによっては、申請から支払いまで2~3カ月かかることも珍しくない」(大手損保)。

 相次ぐ台風の直接的な被害を運良く免れたとしても安心はできない。被害が拡大し、損保各社の支払い保険料が膨大になれば、各社は支払った保険料の分を補うために火災保険料を値上げせざるをえない。そうなれば家計への負担が増すことになる。

 火災保険料の値上げは通常4年に1回程度だが、相次ぐ自然災害の発生で、値上げペースは近年になり短くなっている。昨年10月には平均6~7%値上げされたが、2018年の台風21号や西日本豪雨で損保各社の保険金支払総額が約1.5兆円に膨らんだため、来年の1月にも再度、値上げされる予定になっている。

 しかし、来年1月の値上げについては、2019年の台風15号、19号の被害は反映されていない。そのため、2018年に続き、2019年も損保各社が1兆円規模の保険金支払総額を計上した場合、「来年度以降のさらなる火災保険料の値上げに踏み切らざるを得ない」(損保大手幹部)。

 地球温暖化などの影響で、国内の台風や暴風雨による気候変動リスクは年々高まっており、「火災保険料が今後、急激に値上げされる可能性も否定できない」(経済官庁幹部)。自然災害による直接的な被害がない家庭にも、じわりとダメージが広がっていきそうだ。(西村利也)

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