住宅施工現場の無人化計画を進める
--昨年10月に消費税が増税された。住宅メーカーには逆風だったのでは
「消費税増税後の住宅販売は、税率が5%から8%に引き上げられた2014年より落ち幅は低い。14年は対前年比で20%落ちたが、今回は10%にとどまっている。政府の打ち出した各種の施策が効いている。ただ、落ち込みが長期化するようであれば追加施策が必要になってくるだろう。一方で物流、商業施設は好調だ。首都圏で手掛ける物流施設は、建設後1年経たものの入居率が100%だ。首都圏以外の地域を総合しても、同様の条件で空室率は3.6%にとどまる」
--昨年は中国での巨額不正流出事件や、住宅などの建築基準法違反問題など不祥事が相次いだ
「一連の問題を受け発表した社内のガバナンス(統治)強化策を着実に進める。その一環で決めた社内取締役の定年制導入をめぐり、樋口武男会長を対象外にしたことを疑問視する声もあるが、(創業者の故石橋信夫氏から直接薫陶を受けた)樋口会長には創業者精神を社内に伝える役割を果たしてほしい。これは樋口会長にしかできないことだ」
--建設業界では人手不足が深刻化している
「住宅施工現場の無人化プロジェクトを開始しており、相当なコストをかけて進める計画だ。若い社員らから約3000ほどのアイデアが集まっている。現在、優れた案をベースにワークショップを開催している。具体的にはロボットや人工知能(AI)、顔認識技術などを活用して実現を目指す。施工現場の作業は8割程度の無人化が可能だと思う。現場作業においてはさまざまな規制もあり、すぐには難しいが、2、3年後に実証実験を開始できればと思っている」
--海外事業の展望は
「米国事業は非常に安定しており、注力している。ただ、米政府の移民政策が労働者不足を招いており、労働力の高額化を招く要因となっている。それが成長の妨げになる可能性があるだろう。中国のプロジェクトも見通しが良い。インドネシア事業も好調だ」
--25年大阪・関西万博や統合型リゾート施設(IR)の誘致が計画される大阪・夢洲の開発にどう関わる
「どこかの(会場周辺沿線の)駅前開発を全体的にやらせてもらえないかと思っている。他の住宅メーカーとタッグを組んでやる、という可能性もある。商業施設、ホテルも対応できる。そこにはモノが運ばれるわけで、物流事業の可能性も当然出てくるだろう。夢洲の中、外にも関心がある。中だとすれば、ホテル事業などをやらせてもらえないかと考えている」
【プロフィル】芳井敬一
よしい・けいいち 中央大卒。1990年大和ハウス工業入社。海外事業部長、専務執行役員などを経て、2017年11月から現職。大阪府出身。