海外で利益出す構造へ 国内では5G
--現在の事業環境をどうみるか
「デジタル化で時代が急速に変わっている。グローバリズムが終焉(しゅうえん)を迎え、ナショナルセキュリティーへの意識が高まっている。さらに環境問題への対応も急務だ。日本経済は袋小路に入っているといわれるが、産業競争力を高めるいい機会になる。社会の革新が求められる時期にきており、NTTとしてもデジタル化で貢献できる」
--次世代通信網の構築でソニーや米インテルと連携、米マイクロソフトとも提携を発表した
「(米国の巨大ITの)GAFAの台頭に危機感があり、リーダーシップをとっていく必要がある。日本にとっても、世界にとっても、時代の変曲点になるかもしれない」
--GAFAと対立は激化するか
「GAFAと常に競合するというわけではない。ドコモは米アマゾンと提携している。顧客関係にある企業もある。オープンな形で協力していくことが分断化社会に対する答えの一つにもなる」
--米中対立への対応は
「NTTデータが米連邦政府を顧客に持っている。そのため、米国で規制された中国企業の製品を扱うことができない。米国の法律が、グループ全体に適応され、ファーウェイ排除はせざるを得ない。問題は香港だ。中国政府の規制が強まれば、数百億円規模の事業が影響を受ける」
--事業上の課題は「海外市場で利益を出す構造に変革しないといけない。さらに国内では第5世代(5G)移動通信システムが一つのキーワードになる。日本全体の産業の浮上につながるとみている」
--災害も多発している
「東京のバックアップを強める。復旧する力を強化する」
--東京五輪後の景気動向をどうみるか
「米中貿易交渉で第1段階の合意や、英国のEU離脱協定法案が可決されるなど、明るい兆しはあるが、情勢は本質的には何も変わっていない。景気後退の傾向は続く。ただ、受注状況からみると、急激に落ち込むということはない。緩やかに落ちるのではないか」
--懸念材料はあるか
「昨年10月の消費増税の影響がどう出るかだ。今のところは設備投資への影響は見えていないが、どうなるか。設備投資がしぼむとなれば、日本経済全体が下がることになりかねない」
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【プロフィル】澤田純
さわだ・じゅん 京大卒。1978年日本電信電話公社(現NTT)入社。NTTコミュニケーションズ副社長を経て、2014年からNTT副社長。18年から現職。大阪府出身。