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改革効果はこれから このラグビー人気を逃すな

 「荒ぶ~る 吹雪~の 逆巻くな~か~に~」-。早稲田大学ラグビー部の斎藤直人主将の歌声が静まった場内に流れ、歓喜の合唱となった。「球蹴~る 我等~は 銀魂く~だ~く~」。令和初のラグビー大学選手権決勝は早大が明大を下して11シーズンぶりの大学日本一に輝いた。大学日本一になったときにしか歌わない部歌「荒ぶる」をバックスタンドでしみじみと聞いた。(産経新聞客員論説委員・佐野慎輔)

 8割が「観戦続ける」

 新たに完成した国立競技場は11日、5万7345人の観客をのみ込んだ。「この会場で、この相手で決勝を戦えて」と斎藤主将が語った通り、新国立での早明両校による頂上対決はラグビー界にとって最上の幕開けとなった。

 当初は秩父宮ラグビー場での開催予定だった。昨年9月、「決勝の舞台は新しい国立で」と変更要望の先頭に立ったのは早大ラグビー部に在籍した森喜朗元首相。関係者によれば、「早明決戦になれば最高なんだけどな」と話していたという。もちろん早明対決はおろか、ラグビー・ワールドカップ(W杯)の盛り上がりが起こる前の話だ。ラグビーW杯で生まれたラグビー熱は依然、続いている。早明決戦もそうだが、12日に開幕したトップリーグも各地で盛り上がった。ラグビーW杯会場だった花園や熊谷、神戸、レベスタのほか、秩父宮、ヤマハでも日本代表メンバーが躍動。観衆を魅了した。

 そうしたラグビーW杯の影響を象徴する数字が手元にある。笹川スポーツ財団が昨年末、全国の18歳から79歳までの男女4000人を対象に実施した「ラグビーワールドカップ2019の観戦行動と意識に関する調査」である。主な結果は次の通り。

 1.観戦率 「テレビやインターネットなどのメディア中継で見た」=58.3% 「試合会場で直接見た」=2.2%

 2.ラグビーW杯観戦者による今後の観戦希望 「日本代表戦を直接観戦したい」=29.7% 「同戦をメディアで観戦したい」=57.4% 「トップリーグを直接観戦したい」=14.5% 「同リーグをメディアで観戦したい」=23.3%

 3.ラグビーW杯観戦者による21年秋発足予定のプロリーグへの期待 「大いに期待する」=25.7% 「ある程度期待する」=48.8%

 調査結果から分かることは何らかの方法でラグビーW杯を観戦した人は対象の6割を超え、観戦した人の8割が今後もラグビー観戦を続けたいと答え、プロリーグへの関心も高いことだ。調査にあたった同財団のシニア政策オフィサー、武長理栄さんは「メガイベントの国内開催が人々に与えるインパクトは大きく、日本代表の快進撃もあってラグビーへの関心は確実に高まっている」と話す。また、今後の人気定着に向けて、「観戦環境の整備」「メディアでの試合配信を含めた情報発信」が必要だと指摘した。

 改革効果はこれから

 ラグビー界は仲間意識が高いが、ようは閉鎖的で日本ラグビー協会の広報活動も鈍かった。昨年発足した森重隆会長、清宮克幸副会長体制による改革効果はこれからだ。大学ラグビー決勝、トップリーグ開幕での盛り上がりをどう今後につなぐか。協会が無策だった15年の二の舞いを演じてはならない。

 観戦環境といえば、国立競技場の観客席は見やすい。ただ、客席の前後のスペースに余裕がなく、中ほどに着座すると、出入りに観戦中の人を立たせてしまう。これでは世界に誇るスタジアムにはならない。いずれ新国立について書くことにしよう。

【プロフィル】佐野慎輔

 さの・しんすけ 1954年生まれ。富山県高岡市出身。早大卒。産経新聞運動部長やシドニー支局長、サンケイスポーツ代表、産経新聞特別記者兼論説委員などを経て2019年4月に退社。笹川スポーツ財団理事・上席特別研究員、日本オリンピックアカデミー理事、早大非常勤講師などを務める。著書に『嘉納治五郎』『金栗四三』『中村裕』『田畑政治』『オリンピック略史』など多数。

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