--昨年4月の社長就任からの振り返りは
「まず就任していろいろなところを回り、お客さまからのいい意味での信頼感や期待感をひしひしと感じて身の引き締まる思いだった。工場も回る中で、事業を考えてそれぞれの現場が動くようになっていると感じた。一方で、市場の先行きの不透明性があるので、多少の景気の変動があってもしっかりと利益が出せる事業体質を作る必要があると思っている」
--子会社の三菱航空機が開発しているジェット旅客機「スペースジェット(旧MRJ)」の今年半ばの初号機納入の目標は
「現段階で目標を変えることは一切ない。皆さんのご期待に応えられるよう頑張る」
--スペースジェット事業の将来的な見通しは
「ロングレンジでいえば、航空機は投資回収にある程度の時間がかかるので、投資のリターンがいつごろになるかをよく見極めながら事業を進めていく。大きなビジネスのスキームは変わらない」
--原子力事業で加圧水型軽水炉(PWR)の電力会社との共同事業化は
「電力会社とはしっかりと連携を取りながら安全第一で進めており、特に何か今、形態を変えないといけないという認識ではない」
--航空機部品工場の新設やクルーズ船の修繕など長崎造船所の今後の活用方針は
「長崎地区が当社グループの大きな生産拠点の一つであることに変わりはない。航空機部品工場はITなどを使って非常に生産性を高めた世界でもトップレベルの工場になると期待している。クルーズ船の修繕についても、環境がいいので、長崎県や長崎市ともいろいろ議論しながら相談させてもらっている」
--造船事業の現状認識は
「非常に競争が激しくなり、従来のままでは厳しいと思っている。ただ、当社はフェリーや貨客船、海上保安庁向けの巡視船など得意な船があるので、顧客ニーズを踏まえて進めていく。環境規制対応など製品プラスエンジニアリング的なところにも強みがあり、ここも継続する。造船事業の状況は楽観できないが、今のところは何とか進めていこうと考えている」
--今後どういう部分で稼いでいくのか
「今年はどうかというと『ESG』がキーワードになる。環境対応の製品へのニーズはあるので、いろんな実現の仕方がある。例えば、既存の火力の効率を上げるだけでも二酸化炭素の排出量は減らせる。既存のものが落ちる分、そういうものでカバーできる」
【プロフィル】泉沢清次
いずみさわ・せいじ 東大卒。1981年三菱重工業入社。三菱自動車取締役、三菱重工業取締役常務執行役員などを経て、2019年4月から現職。千葉県出身。