巨額収入の循環は
さて、わが国では今年の正月も多くのスポーツイベントが開催された。特に国内随一の大学駅伝が2日間にわたって行われ沿道には多くの観衆で埋め尽くされた。これまでの結果から英国的オープンリーグ化しつつあるような本大会は大学の経営戦略に大きく委ねられるところがある。また昇降格ならぬシード権争いを主催メディアがドラマのように映し出す姿は何かを隠蔽(いんぺい)しているようにも感じる。数年前の研究によるとそのパブリシティー効果は約58億円と算出しているがその額は年々上昇の一途をたどる中、両者の思惑はエスカレートする。
しかし、沿道に繰り出したのはファンだけではない。今大会も数多く陸上関係学生のボランティアたちが早朝からコース沿道に配備され同大会の安全運営に寄与している。その待遇は既に報道でも取り沙汰されている通りのようだ。イベント規模から主催者側の巨額な広告収入を容易に察することができるがその恩恵と循環は果たしてどうか。スポーツイベントやプロチームの機能は単にアスリートだけの問題ではない。その機能を理解すべく主催者のマネジメントが問われている。
【プロフィル】川上祐司
かわかみ・ゆうじ 日体大卒。筑波大大学院修士課程スポーツシステム・健康マネジメント専攻修了。元アメリカンフットボール選手でオンワード時代に日本選手権(ライスボウル)優勝。富士通、筑波大大学院非常勤講師などを経て、2015年から帝京大経済学部でスポーツマネジメントに関する教鞭を執っている。著書に『アメリカのスポーツ現場に学ぶマーケティング戦略-ファン・チーム・行政が生み出すスポーツ文化とビジネス』(晃洋書房)など。54歳。大阪府出身。