買収される側の企業の同意を得ないまま、一方的に不特定多数の株主から株式を買い集める敵対的な株式公開買い付け(TOB)が日本でも活発化してきた。背景には、企業価値向上に向けた手法の一つとして認識されるようになってきたという事情がある。
旧村上ファンド系の投資会社であるシティインデックスイレブンスは21日、東芝機械にTOBを実施すると発表した。20日には、前田建設工業が持分法適用会社の前田道路をTOBで連結子会社化すると発表した。いずれも買収される側は反発している。
日本では従来、敵対的TOBは失敗に終わることがほとんどだった。最近は投資ファンド以外の企業も敵対的TOBに踏み切るケースが出てきた。昨年、伊藤忠商事がデサントに仕掛けた敵対的TOBは経営トップの交代につながった。
風向きを変えるきっかけとなったのは、コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)やスチュワードシップ・コード(機関投資家の行動指針)の導入だ。株主のチェックが厳しくなったことで、経営陣が企業価値を高めるための取り組みを重視するようになった。
企業同士の株式持ち合いの解消が進んだことも注目材料だ。市場関係者は「安定株主の比率が低下すれば、日本でも敵対的TOBは増えていく」とみている。(米沢文)