ハザードマップ

玉屋/イズミプロセス M&Aで規模拡大もずさんな管理

 ▼玉屋 玉屋は1月6日、松江地裁に民事再生法の適用を申請した。紙製品の卸売りのほかパチンコ店も経営し、ピーク時の1995年6月期は114億3405万円の売上高を計上していた。その後、パチンコ部門が苦戦を強いられ店舗閉鎖を進める一方で、ミネラルウオーターの販売に参入した。

 しかし、本業の紙製品卸の売り上げが需要低迷で伸び悩み、1店舗残っていたパチンコ店も競合や需要の低下もあり、2019年6月期の売上高は35億3685万円まで落ち込んだ。売り上げ回復のめどが立たないこともあり、今回の措置となった。

 ▼イズミプロセス イズミプロセスと関連3社は昨年12月17日、東京地裁に特別清算を申請した。イズミプロセスは1957年7月創業の老舗印刷業者。シルクスクリーン印刷を得意とし、自動車やオートバイ向けのエンブレムステッカー、機械操作パネル向けなど特殊印刷に強みを持っていた。同業他社では対応困難な小ロット多品種生産が可能な点もセールスポイントで、2015年6月期は売上高3億2100万円を計上していた。

 15年3月に福田豊氏が代表に就任して以降、M&A(企業の合併・買収)戦略を積極的に展開。関東や関西などの中堅企業の買収を進め、ピーク時には10社前後を傘下に収めていた。

 しかし、急激な業容拡大の一方で、買収資金の負担も過大となっていた。また、グループ企業で工場火災が発生するなどのトラブルも発生し経営が悪化。取引先への支払い遅延や、銀行口座の凍結、所有不動産が仮差し押さえを受けるなど資金不足が露呈して信用が低下した。

 18年12月にはグループ会社の和泉石灰建材が大阪地裁に民事再生法の適用を申請。イズミプロセスグループは事業継続が困難となり、19年12月16日に株主総会の決議により解散した。

【会社概要】玉屋

 ▽本社=松江市

 ▽設立=1953年3月

 ▽資本金=5000万円

 ▽負債額=60億2675万円

【会社概要】イズミプロセス

 ▽本社=静岡市清水区

 ▽設立=1979年1月

 ▽資本金=1000万円

 ▽負債額=約56億8000万円(関連会社分を含む)

 〈チェックポイント〉

 玉屋は島根県内の紙卸の約4割のシェアを占める企業だが、昨年12月に粉飾決算が明らかになり急転した。銀行に支援要請し、私的整理での再建を打診したが、最近は粉飾決算に厳しい姿勢でのぞむ銀行が増えてきた。長年にわたり複数の決算書を使い分けるなど、悪質性が高いとして理解が得られなかった。

 イズミプロセスグループは経営者が交代して以降、M&A戦略にかじを切った。事業承継に課題を抱える全国の中小企業をターゲットに積極的な買収を重ね、規模を拡大させたが、すぐに資金不足に陥った。放漫経営ともいえるずさんなグループ管理で、多くの関係者や従業員を振り回す結果を招いた責任は重い。(東京商工リサーチ常務情報本部長・友田信男)

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