飲酒したかどうかを呼気で調べるアルコール検知器を導入する動きが企業の間に広がってきた。航空会社のパイロットで不祥事が相次いだことをきっかけに業種を超えて意識が高まり、営業マン向けに配備する事例も。機器メーカーには追い風で、健康状態を点検する機器も併せて売り込む構えだ。
「出発前のチェックが習慣になった」。サッポロビール大阪支社の田中肇さんは慣れた手つきで小型検知器のコードを社用スマートフォンに差し込み、検知器の飛び出し口へ息を吹き込んだ。同社は車を運転する全国の営業担当者ら約700人に検知器を貸与し、オフィスなどで出発前の検査を義務付けている。
検査の結果はインターネットを通じて即時に上司へ送信される。この検知器を販売するパイ・アール(大阪市)の担当者は「危機管理の観点からも関心が高まっている。3年で売上高3倍を目指す」と意気込む。
据え置き型を中心にアルコール検知器を製造販売する東海電子(静岡県富士市)は、親指を機器に当てると心拍数やストレスを計測できる機器を近く発売する。アルコール検知器と併用した場合はデータの一体的な管理が可能。運転中の急病による事故防止につなげたい考えだ。東海電子のアルコール検知器を既に導入した西日本JRバスの担当者は「飲酒運転の撲滅は最低条件。さらに急病対策も必要になる」と語った。
メーカーでつくるアルコール検知器協議会によるとタクシーやバスなどプロの運転手による飲酒運転事故は毎年約20~30件発生。協議会の担当者は「機器の普及や意識改革を通じ、飲酒運転を根絶したい」と話している。