栄養価が高く、ヘルシーな食べ物として人気のアボカドが注目されているのを追い風に、国内栽培に取り組み、消費の大部分を占める輸入品に挑戦する動きが出てきた。生産者は品質にこだわった国産品への認知度を高めたい考えで、「輸入物の1割でも国産に置き換われば、大きな市場になる」と期待を込める。
宮崎市内で昨年11月、国産アボカドを使った創作料理の試食会が開かれた。ギョーザにみそ汁、デザートにババロア-。主催したのは市内でハウス栽培する横山洋一さん(42)だ。「煮ても焼いても、揚げてもいい。アボカドの可能性をまずは知ってもらいたかった」と横山さん。参加した看護師で野菜ソムリエの前畑優子さん(47)は「斬新な組み合わせに驚いた。いろいろと楽しめてどれもおいしかった」と顔をほころばせた。
熱帯果樹のアボカドは国内で露地栽培すると寒さなどで枯れることが多く、ハウス栽培はコストが高くなるのがネックで、生産者がなかなか広がらなかった。横山さんはマンゴー農家の父親を手伝いながら、同じハウス内で2011年にアボカドの試験栽培を開始。15年に専用のハウスを設けて規模を広げ、19年度は1トン超を出荷予定だ。
贈答用として地元の百貨店やインターネット通信販売などで販売し、100グラム当たり1000円程度と高価だが「全国からの問い合わせに生産が追い付かない状況だ」という。
宮崎銀行もアボカドを生産する農業法人「夢逢いファーム」を17年に設立し、昨年初めて収穫した。平野亘也頭取は「きちんとブランド化すれば、ビジネスとして十分に成り立つ」と期待する。
農林水産省によると、アボカドの国内収穫量は16年に8.1トンとなり、14年の0.2トンから急拡大した。ただ、財務省によると16年のアボカド輸入量は約7万3900トンに上り、消費の大部分を輸入品に依存している。
松山市は09年からアボカドの産地化に取り組み、露地栽培が広がっている。担当者は「栽培を始めたころは寒さや乾燥で木が枯れてしまうことが多かったが、苗を植える場所を考えるなどの対策で実が付くようになってきた」と説明する。
松山市内での当初の生産量は年数百キロだったのが、18年度に2トン超へ膨らみ、生産者数も拡大。市は今後もノウハウを蓄積し、「アボカドをミカンのような名産品にしていきたい」と意気込む。